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文字数 726文字

「待って。Be Leftやってる? 」


「やってる。シェアする? 」


「うん。アタシ、高橋バンビーナ。江戸川区フル校の一年。前の学校でソフトボールやってた」


「そんな自己紹介いいよ。もう現実じゃ会わない」


「そうかもだけど、もしBe Leftでアタシの最後を知ったら、通報して欲しいの」


 バンビーナの言葉に、メガネの表情が固まった。
 
 
 そして、すまなそうに笑った。
 

 歯を見せて笑うんだ、とバンビーナは思った。


「もしそんなことになったら、必ず通報するね」


「あなたは何て名前? 」


「俺は山田スヴェードヴェリ。日本とイギリスのハーフ」


「えっ。生き残ってたの? イギリス人」


「ウソです。純日本人です」


 イギリスは大昔、捕食者に滅ぼされた。特に念入りに滅ぼされた。


「名前はホント。俺の名前呼びにくいから、ベリでいいよ。Be Leftのアカウントもshit of Aim bergでクソエイムのべリって登録してるから」


「クソエイムのベリが死んじゃったら、私も必ず通報するね」


 消防車のサイレンの音が近づいてきた。
 もうじき消防車がここへ到着するだろう。


「高橋さん、カメムシが好きなんだね」


『カメムシ』はバンビーナが入れ込んでいるネット小説家だ。
 ベリはさっそくバンビーナのプロフィールにある本棚を見てくれたようだ。


「うん。大好きなんだ。ベリも読んで」


「俺も好きだよ、カメムシ。でも、カメムシは引き際がわからなくて、あれもこれも詰め込んでストーリーが崩壊してるよね☆」


「えっ・・・・・・」


 ネットの中でカメムシを語る場はあっても、リアルでカメムシが好きだという読者に会うのは初めてだ。

 自分がつけたいと思っていたクレームが同じで、バンビーナは一気にベリに親近感を抱いた。
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