きょうだい

文字数 2,668文字

エンド「兄さん…暑いね…」

ファイナル「仕方ねぇよ…夏だからな…」

イゼ「でもさぁ…暑すぎだよ……」

ミーンミンミンミンミンミー

博麗神社。

霊夢から留守番を頼まれて1時間と30分。

セミは鳴くわ、太陽の陽は強いわ、

汗は滝のように出るわで…クソ暑い。

イゼ「あづいよ〜……兄様ぁ〜」

ファイナル「やめろくっつくんじゃねぇ…余計暑いだろうが…っ!」

イゼ「ふえぇ〜?じゃあエンド兄様〜」

エンド「やめっ……やめ!あっつい!暑いから!」

イゼ「ふええぇ〜っ…」

頭を内側にして三角形に寝転がる…

エンド「もう無理……」

ファイナル「喋るな、喋るだけで体力が減る」

イゼ「ああ〜っ!!扇風機でもあれば少しは楽なのに〜ぃ!」

エンド「てか兄さん…上着脱いだだけでしょ?暑くないの…?」

ファイナル「涼しいとまでは行かんが…熱中症になるよりかは良いだろ」

霊夢「お待たせ…大丈夫だった?」

ファイナル「お前にはこれが大丈夫な奴らだと?」

霊夢「そうね…地獄みたいな暑さだものね…」

エンド「もう…いい?」

霊夢「良いわよ…ありがとう、お疲れ様。」

エンド「ほらイゼ、行くよ」

イゼ「やだぁー!」

ファイナル「じゃあ置いてくか。」

イゼ「もっとやだ!」

霊夢「あ、お礼にこれ」

イゼ「やった!アイス!」

ファイナル「すまんな…わざわざ3人分も…」

霊夢「こんな日に急に呼び出してかなり待たせちゃったからね…」

エンド「ありがたく貰うよ。ありがとう」

霊夢「ええ。気をつけてね」

階段を下っていく。

エンド「…良かったね、棒アイスじゃなくて」

ファイナル「あんなもん買ったら持って帰ってくるまでに溶けて大惨事になるぞ」

イゼ「でも十分冷たいからいいじゃん!」

ファイナル「これからどうする?人里にでも行くか?」

エンド「あー……何か冷たい飲み物でも買って帰ろうよ」

ファイナル「そうだな…」


自販機の前

イゼ「なに買う?」

ファイナル「俺はもう決めてる」

お金を入れてボタンを押す。

イゼ「あ、お茶なんだ」

ファイナル「ほら、早く選べよ」

イゼ「じゃあ私これにしよ」

ゴトン!

エンド「あ、それ…」

イゼ「あ!この前レイルさんがロッキーさんに振られて叫んでたやつ!美味しいらしいよ?」

エンド「うーん…じゃあ俺これでいいや」

ファイナル「…スポーツドリンクか」

エンド「まーね。」

イゼ「じゃ、行こっか!」

ファイナル「急に元気になったな、お前…」

イゼ「え、だって冥界の方が涼しいjッタァ!」

ファイナル「馬鹿。せめて過ごしやすいと言え。お前は冥界を天然のクーラーだと思ってるだろ」

イゼ「何故バレた!?」

エンド「そらあんなこと言ったらね…」

イゼ「でも…叩くことないじゃん?」

ファイナル「軽くだ。お前がオーバーリアクションしてんだろ」

イゼ「むぅ!」

ファイナル「行くぞ…」


妖奈「おかえりなさい!」

ファイナル「いい子にしてたか?」

妖奈「うん!」

イゼ「……むぅ。」

エンド「嫉妬?」

イゼ「…かもね」

エンド「兄さんは十分俺達と接してくれてるだろ?城にいた頃なんて…」

イゼ「それは…そうだけどさ…」

エンド「俺は兄さんが笑ってくれたらそれでいいんだよ…」

ファイナル「…どうした?2人して哀しそうな顔して」

エンド「…俺は兄さんのそういう顔が見たかったんだ」

ファイナル「は?」

イゼ「…兄様ぁ〜!!」

ファイナル「なあっ!?」

イゼが抱きついた反動で倒れる

ファイナル「イッ…イゼ…!離れろ…っての!」

エンド「ま、諦めなよ、兄さん。」

ファイナル「おまっ…!?」

妖夢「わあっ……」

ファイナル「妖夢!?その、これはっ…」

妖夢にも抱きつかれる。

ファイナル「ふっざけんな……っ!」

エンド「それだけ頼りにされてるとか愛されてるとかって解釈できない?」

ファイナル「限度がある!」

しばらくするとファイナルも諦めたようでなすがままになっていた。

ファイナル「なぁエンド…俺はあとどのくらいこうすればいい?」

エンド「さぁ?でも着替えさせてくれる時間はくれたじゃん?」

あれからは流石に着替え、今は室内で抱きつかれている。

ファイナル「俺は抱き枕じゃねぇんだが…」

エンド「2人ともそのまま寝ちゃいそうなんだけど」

イゼは寝落ち寸前、妖夢に至ってはとっくに寝ている。

ファイナル「どうしようもねぇんだよな」

エンド「俺達子供の頃ってそういうこと全くしてなかったもんね」

ファイナル「そうだな…」

エンド「…昔さ、イゼから聞いたんだよ。『兄様と一緒に寝てみたい』って。」

ファイナル「お前の事じゃ無いのか?」

エンド「いや、イゼは俺のこと『エンド兄様』っていうじゃん?」

ファイナル「…」

エンド「今日くらいは甘えさせてあげてよ。」

ファイナル「…そうか。」

エンド「…兄さん」

ファイナル「どうした」

エンド「もし、俺が死んだら…兄さんはどう思う?」

ファイナル「急にどうしたんだよ…当然、悲しむだろうな」

エンド「だよな…」

ファイナル「泣くな。お前らしくない」

エンド「だって……だってさ…っ!!」

ボロボロと泣き始める。

…初めて見るかもしれない。

エンド「たまに見るんだよ…兄さんが居なくなる夢を…頼りになって、俺達を支えてくれて、一緒にいてくれる兄さんがさ…!」

ファイナル「エンド」

エンド「っ!」

ファイナル「心配するな」

エンド「……兄、さん……」

ファイナル「辛かったら泣け。嬉しかったら笑え。そのふたつさえ覚えておけば楽に生きていける。せめて…せめて、俺みたいにはなるなよ。」

エンド「…っ」

ファイナル「お前はお前達の兄だ。それくらいの自覚はある。いつでも頼れ」

エンド「兄さん……」

俺の手を握ってエンドは泣く。

…頼りにされて、愛されて。

身に染みるほど分かった。

ファイナル「…幸せって、なんだろうな」

エンド「…今みたいな事を言うんじゃない?」

まだ湿っている声で言う。

ファイナル「かもな」

エンド「ごめん、兄さん」

ファイナル「いいんだよ、エンド」

エンド「城にいた時も…ロッキーさん達と過ごした時も……兄さんは…」

ファイナル「過ぎたことだ。」

エンド「でもっ…」

ファイナル「変わってくれようとしたんだろ?」

エンド「…兄さんの過去が少しでも楽になればと思って…」

ファイナル「気持ちだけでいい。」

エンド「兄さん…やっぱり……俺……」

ファイナル「……お前は頼りになる。お前が居なきゃ俺は今頃とっくに死んでるよ」

エンド「………ぐすっ……」

1度引っ込んだ涙が溢れてくる。

目の前には逆さまの兄の顔。

優しく微笑んでいる顔。

─ずっと、見たかった顔。

─ありがとう。

エンド()から、ファイナル(兄さん)に、

「最大限の感謝」を、

贈らせてください──。


to be continued……
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み