持ちつ持たれつ

文字数 1,674文字

マイン「……暇だ」
フィル「…俺だって暇だよ」
マイン「何もすることがないってのも困ったものだねぇ…」
腰掛けていたベッドに転がる。
フィル「…ならファイ義兄と戦えばいいじゃん」
マイン「それもいいけど…向こうはそんなに暇じゃなさそうだしね」
フィル「そうかな?」
マイン「片や

人間、片や王になるはず

半竜。そもそもの立場が天と地だからね」
フィル「ただの人間…って…そうでも無いでしょ」
マイン「ああ、自覚してるよ?わかりやすいようにわざと言ったのさ。…と、言っても?僕は君がいなきゃ今も人間だったんだろうけど」
前髪の一部はフィルと同じ髪の色。
マイン「まぁ、僕はこれで満足してるけどね」
フィル「…なんだよ、もっと力が欲しかったみたいな言い方…」
マイン「…欲を言えばね。でも今はどうでもいい。僕自身とイゼと君達が守れればそれ以上の力は望まない。」
フィル「高望みじゃね?」
マイン「…うっさい」
フィル「…それでどうするのさ」
マイン「何も無いんだから仕方ないだろう…?」
フィル「人里でお茶でも飲む?」
マイン「…いいよ。行こうじゃないか」

人里:茶屋店内
マイン「……」
冷たいお茶。
ただそれだけ。
味わい深いだとかはまっったく分からない。
フィル「…どう?」
マイン「どう?って言われても…僕にはお茶の味だとしか分からないよ?」
フィル「まぁ…そうだよね。俺もそうだし」
マイン「…フィル。」
フィル「ん?」
マイン「後で軽く手合わせしないか?」
フィル「いいよ。久しぶりだね」
マイン「…楽しみだよ」
含み笑い。
フィル「僕に勝てると思ってんの〜?」
マイン「勝ってやるさ。実力なら僕の方が上だ」
フィル「言ったな?僕のこと甘く見るなよ?」
マイン「ふふ…それは後でわかるさ」
そうして時間を潰し、移動する。

人気のない場所。
広い草原。
マイン「…風が心地良いね」
フィル「嵐の前の静けさってやつじゃない?」
マイン「…かもね。」
刀を構える。
フィル「…落ち着いてるね。」
同じように構える。
風が強くなり、嵐が来る。
マイン「…その(いかずち)って刀…天候も操れるのか?」
フィル「そうだよ〜…黒雷(こくらい)とはちょっとずつ違うんだよね」
マイン「…へぇ、面白い。」
フィル「だろ?さ、行くぜ!」
雷の閃光。
フィルが飛び掛ってくる。
落ち着いて受け止める。
マイン「目眩しにもならないね」
フィル「あ、そう?」
マイン「雷ってのはこうやって使うんだよ…!」
弾き飛ばす。
そして一気に距離を詰めて斬る。
マイン「『雷切(らいきり)』…」
フィル「しまっ…」
斬撃と共に黒雷が切り裂く。
マイン「…外した」
フィル「ふぅ…危ない…」
距離を取る。
フィル「逃がすか!」
ははは…その距離は…
僕の間合いだ。
マイン「来い。方舟……『ノア』」
周りが海になる。
フィル「ちょ…幻覚はずるくないか…!」
マイン「能力はどう使っても良いだろう?」
ノアが沈んでいく。
落下する船の甲板で相見える。
顔に掛かる水。
マイン「仕切り直しだ…!」
フィル「…やってやる!」
すぐに鍔迫り合いになる。
雷が互いに絡み合う。
フィル「そらっ!」
飛び上がる。
マイン「もらった!」
刀を突き出す。
フィル「甘い!」
避ける。
マイン「掛かったな!」
フィル「なに!?」
黒雷がフィルを貫く。
フィル「っぐ…なんだこれ…」
マイン「これが黒雷。僕の力」
フィル「なるほどね…君から借りただけじゃ何も強くないか…」
マイン「あれは君の純粋な雷だろう。僕は君から竜の力を、君は僕から雷の力をそれぞれ借りている。持ちつ持たれつの関係じゃないか。僕で良ければこの黒雷の力も全部貸してあげるよ。」
フィル「マイン…」
マイン「…僕は君の親友だろう?」
手を差し伸べる。
フィル「…ああ!」
差し伸べた手を握って立ち上がる。
フィル「マインも…俺の竜の力を使いたかったら言ってくれ!きっと役に立つから…!」
マイン「…分かった、覚えておくよ」
フィル「…ありがとうね、マイン」
マイン「なにが?」
フィル「…俺と親友になってくれて」
マイン「…ああ。」
周りの景色は元の草原に戻っている。
水で濡れた服も何事もなく乾いている。
マイン「…帰ろうか」
フィル「ああ!帰ろう!」

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