親の背中

文字数 2,187文字

妖奈(私には、大好きな両親がいる─)

父の背中は大きくて、母の背中は小さい。

…でも、なんだか安心して甘えられる背中だ。

妖夢「妖奈(ような)〜。おいで」

妖奈「わぁーい!」

ファイナル「…大きくなったな」

妖夢「ね。」

小さな頃の話。

2人な顔を忘れかけていた事、

お兄ちゃんと大喧嘩した事、

些細なことまで─

妖奈「よく覚えてるね…」

ファイナル「…中々忘れられないものだぞ?なぁ、妖夢?」

妖夢「うん。記憶に残るものだよね〜。」

妖羅(ようら)「あ、妖奈」

妖奈「お兄ちゃん!」

妖羅「どうしたんだよ、みんな集まって」

ファイナル「お前達の幼い頃を話してたんだ。」

妖羅「へぇ…」

ファイナル「なにか聞きたいか?」

妖羅「そうだな…じゃあ、性格とか覚えてる?」

ファイナル「とにかく元気だった。毎日遊んで、絶対どこか怪我して帰ってきたって聞いた。」

妖羅「あー…確かに覚えがある」

妖夢「でしょ?結構覚えてるんだよ。」

妖奈「お父さん!」

ファイナル「なんだ?」

妖奈「私と手合わせして欲しいな!」

ファイナル「いきなりどうしたんだ…まあいい。」

立ち上がる。

すらりとした背中はいつ見てもかっこいいって思う。

妖羅「妖奈〜。頑張れよ〜。」

妖奈「…気が抜ける」

妖羅「ハハハ…だってそうなるように応援してるもん」

妖奈「ちょっと!?」

妖羅「…まあ、頑張れよ。」

…俺には、誇りに思う両親がいる。

その人たちはいつも俺達を見守ってくれてて、

こうやって戦う術を教えてくれる。

ファイナル「好きなタイミングで仕掛けてこい」

たまに突き放されるけど、ちゃんと乗り越えたら褒めてくれる。

妖奈「せあっ!」

さっきから私ばかり攻撃してる…

なのに当たらない…

ファイナル(それはお前の太刀筋が見切りやすいからだ、妖奈)

もっと踏み込め。

武器のリーチに甘えるんじゃない。

ファイナル「はっ!」

妖奈「あっ!」

妖奈「っ!」

ファイナル「大丈夫だったか」

妖奈「うん…」

ファイナル「もう一度だ。やれるか?」

妖奈「うん!」

ファイナル「良し。そうだな…アドバイスを教えてやる。」

妖奈「本当!?」

ファイナル「踏み込みが浅い。」

ファイナル「その原因は…分かるか?」

妖奈「…長い刀ばっかり使ってるから…甘えてる?」

指を鳴らす。

ファイナル「その通り。まずはそこから直してみろ。」

妖奈「わかった!」

…こんな風に、俺達が無意識でやってる事をちゃんと注意してくれてる。

妖羅「父さん!…後で、俺もやっていい?」

ファイナル「ああ、いいぞ。」

妖夢「あ、私もやるよ。妖羅、私とやろ。」

妖羅「え、母さんと?大丈夫?」

妖夢「甘く見ない方がいいよ?」

ファイナル「妖奈、これが終わったら妖羅と交代な」

妖奈「はーい!」

妖羅「行くよ…!」

振りおろす。

妖夢の軸は全くブレていない。

力では勝ってると思ったのに…というかこの人ら技術でねじ伏せてると思ってたけど…なるほど、こういう純粋な力も…

妖羅「…見くびってたな」

妖夢「でしょう?」

微笑む。

妖羅「ふーっ…よし、行くよ」

これは遊びじゃない。

俺の実力を測る「テスト」だ。

妖羅「ふっ!」

初撃は止められる。

続けて行く。

2…3…

妖羅「はっ!」

妖夢「─!」

妖羅「う…!」

首元に突き付けられる。

ファイナル「終わったか?じゃあ交代だな」

妖羅「…よろしく、父さん」

ファイナル「…ああ。来い」

…仕掛けていく。

木刀がぶつかり合う。

折れたりしないよな?

ファイナル「そら!」

何とか反応出来た…次は─

妖羅「やあっ!」

突き出す。

その腕に感触はない。

ファイナル「成長したみたいだが…まだ甘いな。」

妖羅「やっぱり強い…父さんも…母さんも…」

この2人の壁は…上が見えない。

いや、見えてはいるんだ。

ただ、果てしない。

俺は…父さんと肩を並べられるのか?

母さんと同じ場所に…立てるのか?

妖奈「…ふうっ。」

幽々子「みんな、よく頑張ったわね。」パチパチ

妖奈「幽々子様…」

幽々子「あらあら。幽々子「さん」でいいのに。」

妖羅「父さん達の呼び方が幽々子「様」なんで…慣れちゃいました」

幽々子「そう?呼びたかったらいつでも言ってくれて良いのよ?」

妖奈「そんな…恥ずかしいです…」

妖夢「ふふっ。じゃあ私はなにか持ってくるから、待っててね」

ファイナル「俺も行こう。1人じゃ大変だろうしな」

奥へ歩いていく。

妖奈「…私、強くなれるかな…?」

妖羅「俺も。なんか心配になってきたよ…」

幽々子「あなた達は十分強いわ。」

妖奈「…そうですか?」

幽々子「ええ。2人なら、どこまでも強くなれる。保証するわ。」

ファイナル「自信を持て。いざとなれば自分の全てが武器になる」

妖羅「自分が…?あ、ありがと…」

冷たいお茶。

生き返る…

妖夢「そうだなぁ…経験とか、知識とか。でもやっぱり自分を信じることが大切かな。」

ファイナル「難しいだろうな。無理もない」

妖奈「自分を信じる、か…」

ファイナル「ゆっくりでいい。無理はするな」

妖夢「あ!待ってよ!」

妖羅「妖奈!」

妖奈「なに?」

妖羅「その…これからも、よろしくな…」

妖奈「…うん!」

幽々子「ふふ。…未来が楽しみね。」

父さんと母さんは…

強くて、優しくて、温かくて─

俺達を育ててくれた人だ。

妖羅(大好きだよ…父さん、母さん…2人の前じゃ絶対言えないけど…いつか言うから…)

妖奈(お母さん、お父さん…大好きだよ!きっと目の前じゃ恥ずかしすぎて言えないけど…いつか、いつか言うからね!)

to be continued…
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