主従の関係

文字数 1,044文字

ある日の夜、深夜。

1人、自室で本を読む。

…その手は震え、目線は安定しない。

ファイナル「くっそ…まともに読めやしねぇ…」

机に置いた本の題名は『わたしをさがして』

1人の姿の見えない少女があの手この手で誰かに認識してもらおうとする短い物語だ。

…俺が、好きだった本。

どうして…こうなった?

彼女に…この本を読み聞かせて…

本に興味を持ってしまった。

同じ本が良い、と…この本を抱えて、嬉しそうに話してきた。

彼女が残した物のひとつ。

それがこの本だ。

…あれ以来、本がトラウマになっている。

少しでも好きになれれば─

そう思うほど、辛くなる。

レグルス「ファイナル様。」

ファイナル「レグルス…」

レグルス「また、あの人の事ですか」

ファイナル「聞くな…俺だって…『忘れたい』んだ…」

レグルス「…忘れる?あなたが忘れてどうするのですか。」

ファイナル「…」

レグルス「私の主は人の事を忘れようとはしなかったはずです。」

ファイナル「…」

主…

俺は…

レグルス「…キルア様も、ファイナル様も、私にとっては等しく「主」です。どうか…そんな顔をしないでください…」

ファイナル「…すまん。情けない姿を見せてしまったな…」

キルア「ふあぁ…ファイナル、いますか…?」

ファイナル「…はい。ここに」

キルア「寝付けなくて…しばらく一緒にいてくれませんか?」

ファイナル「ご一緒しましょう。」

キルアの部屋。

ファイナル「今日はどうしましょう」

キルア「そこにいるだけで良いんです…」

ファイナル「そうですか。…今日はどんな夢を?」

キルア「…皆が、居なくなる夢を…」

ファイナル「……それは…」

キルア「私一人じゃ…何も出来ないから…っ」

涙を拭う。

ファイナル「私が傍にいます。ずっと。だから─心配しないでください。」

キルア「─ありがとう。」

…おやすみなさいませ、キルア様。

私は…いつまでもあなたと共に…

ファイナル「……」

キルアの頭を撫でる。

年齢的には妖羅、妖奈達とひとつしか変わらない…

キルアはもう寝息を立て始めている。

…今日はもう遅い。

相当眠かったのだろう。

起こさぬように部屋を出る。

そこにはレグルスが立っていた。

ファイナル「ありがとう、レグルス」

レグルス「いいえ。礼を言われるようなことは一切しておりません。全ては、あなたの決意です。」

ファイナル「…それでも感謝する。今日は休め」

レグルス「…はい。」

自室に入り、机に置かれている本を見つめる。

ファイナル「…また明日だ。少しずつ…やっていけばいい。」

おやすみ、アイゼン。

また明日。

to be continued…
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