文字数 632文字

周りでは 皆が同じように寝転がって 星空を見上げている。
「あれは きっと算盤を模っているのよ」
「あの星は きっとまだ赤ちゃん星ね」
星を楽しんで見ている光景が不思議だった。
誰も笑わない。
ぼくは北斗七星を探すのに必死で、星は楽しむものじゃなくて 覚えるものだと思ってた。
隣りで寝転がっていた女の子が言う。
「今日もお祈りしなきゃ」
なんだろう。
「お祈りって?」
「知らないの?」
僕は寝転んだまま 首を傾げる。
「流れ星が落ちきってしまう前に、願い事を3回唱えるのよ。そうすると願いが叶うの」
「そうなんだ」
それぞれが願いを口にして唱えた。
「お父さんが無事に帰ってきますように」
「お母さんの病気がよくなりますように」
「家族みんなで幸せに暮らせる日がきますように」
戦争という過酷な時代を生きているのに、こんな表現いけないかもしれないけど 、 皆の祈りに胸が熱くなった。
何故だろう、ぼくの時代のほうが絶対楽しいはずなのに。
星空を見ながらぼくはガキ大将に話し掛けた。
「ねぇ」
「なんだ?」
「君が大人になったとき、子供にも、孫にもこの星空を見せてあげて」
「いきなり どうしたんだ?」
「ぼくが生きる2008年はさ」
「うん」
「・・・ なんでもない」
ぼくの心を読み取ったのか、ガキ大将はそれ以上何も聞いてこなかった。
そして一言「わかったよ」と力強く呟いた。
「お前も願い事3回唱えろよ。なんでもいいんだぜ」
ぼくは考えた。
そして流れ星を見つけると目を閉じ3回心で唱えた。
「おじいちゃんに会いたいです」
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