文字数 700文字

「あのさ、ぼく帰るよ。助けてくれてどうもありがとう」
どっちの方向に行けばいいのか全然分からない。
けど、この雰囲気から早く抜け出したくて 皆に手を振ると、とりあえず前を向いて歩き始めた。
そして、数歩歩いたとき、また違和感を抱く。
そこは田舎であっても ぼくの知っている田舎じゃない。
遠くに見える民家も、使われていないのか灯っていない街灯も、風景全てが古めかしい。
地面は タイヤらしき跡のある大きな道なのに アスファルトじゃない。
ここ、どこだ?
ゆっくりと振り返り、皆に尋ねる。
「ここって、何県?」
あの一際大きな少年がこの辺りの地区名を教えてくれた。
おそらくおじいちゃんの家がある集落の住所で間違いない。
ぼくは参ったなとお父さんのように腕を組み、鼻で溜息をつく。
そして、新たな違和感に気付いた。
皆の格好だ。
古着にしては少々解れすぎじゃない?
あの靴下、布で巻いて作られていないか?
もんぺをはいた女の子が妙に目立つ。
今流行っているのかな?
あれ、待てよ、この光景 何かで見たことがある。
どこで見たんだっけ ―――
そうだ、思い出した。
おじいちゃんの子供の頃のアルバムだ。
そんなに沢山は無いだろう数枚の写真を おじいちゃんは ぼくが遊びに来るたびに見せてくれる。
いや、考え過ぎだ。
ぼくは そんなはずはないと首を横に振った。
が、目の前にはやはり自分とは雰囲気の違う子供たち。
年齢はぼくとそうかわらないはずなのに。
「いろいろ聞いてごめんね。もう一つ教えてくれるかな。今って」
えっと平成の前は
「今って昭和何年?なぁんて・・・」
「昭和20年」
その単語のような返答にぼくは一瞬固まった。
「えーー!!!」
嘘だろ?
どういうことだよ。
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