文字数 674文字

「おい、おい!大丈夫か!」
ん?何か聞こえる。
「しっかりしろ!」
誰だろう、ぼくを呼んでいるの?
「おっ、目を開けたぞ」
気付くと、周りを数人の子供達が取り囲んで ぼくの顔を覗き込んでいた。
え?なに?一気に起き上がった。
だけど 頭や体が痛くて、手で押さえる。
「おい、大丈夫か?」
中でも一際体の大きい少年が ぼくに話し掛けてきた。
ぼくと同い年くらいかな。
「うん、何とか。平気だよ」
「そうか、よかった。それにしても何でこんなところで寝ているんだ?」
周りを見渡すと そこは木や草が生い茂る山道。
ぼくは その脇の草むらの上に寝転んでいた。
「ああ、さっきあの上の道から落ちてさ」
指を指して上を見上げると、驚いた。
道が、道が無い。
周りの子供達もきょとんとしている。
「お前、転んで頭でもうったのか?」
皆が一斉に笑い出す。
「いや ・・・ そうだ、携帯の電波探しててさ」
「携帯って何の?電波って何だよ?」
「携帯っていったら電話だよ、携帯電話」
全員静まり返る。
「お前、ほんとうに大丈夫か?」
どうやら本気で心配されているらしい。
携帯電話を知らないのか?
いくら田舎でも携帯電話くらい知っていてもいいのに。
ぼくは立ち上がり 服についた葉っぱをはらった。
「これくらい小さなものなんだけど、知らないかな?」
手で大きさを示し、指で型どった。
「これのこと?」
女の子が携帯電話を差し出した。
「そうそう、これだ」
「あそこに落ちてたの」
「ありがとう」
「これが携帯電話か?」
「そうだよ。テレビで見たことくらいはあるだろ?」
また皆が一斉にぼくを見る。
気まずい。
この違和感漂う雰囲気は 一体なんなんだ。
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