第10話

文字数 488文字

俺は、ホールのロボットがデシャップに全然帰ってこなくなったので、ホールへ飛び出した。

彼らは毎度食器に埋め込まれたチップを判読して識別してから、自分の身体に据え付けられた盆に水平を保ちつつ、ゆっくりと下げ物をしたり、料理を提供するため、異様に作業が遅い。
なるべく自分で下げ物や提供をするようにして、彼らは洗い場やデシャップと客席の間を運んで回る補助と見なした方が良いだろう。
平衡感覚のようなものは、今のテクノロジーではやはり人間に叶わないと見える。
現にキッチンも、出来上がった料理をデシャップに出すところで、ひっくり返して作り直すケースが時々ある。

「料理提供に21分18秒もかかったよ。どういうつもり?」
こういう手合いの客が最近増えた。
「料理も測ってみたら55℃。ぬるすぎる。食えたもんじゃない」
多分、調理スピードに提供スピードがら追いつかずデシャップに置かれたままだった料理なのだろう。
「申し訳ございません」
俺は平身低頭で謝り続ける。
客は、ネットに晒して笑いものにしたいのか、その姿をいちいちカメラに撮っている。
「誠に申し訳ございません」
だいたい3回謝れば、客の方は一旦引く。

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