第2話

文字数 565文字

俺は認証カードをかざし、コード入力して店の扉の鍵を開けた。
キーケースを出して鍵一本で開閉できた一昔前を思えば、少し面倒になった。

レジの側にある有線のロックチャンネルをつける。
今日は初っ端からスリップノットが鳴って、さすがにロックを標榜している俺も引いた。
40年ほど前に流行った爆音系、おぞましいデス声とダークな大所帯バンドが売りだった。
つまり、爽やかな朝には決して似つかわしくない。

電灯類をつけて回る。
今日は、スタッフ全員そろうだろうか。
スタッフは、俺以外皆、AI搭載のロボットなのだが、老朽化のせいもあり時々稼働しない「欠勤者」が現れる。
それで彼らの電源を入れるときが、朝出勤して一番に緊張する時間だ。
彼らは一様に人型なのだが、足元は不安定な二足歩行ではなく、キャタピラー式である。その背中部分にあるスイッチを入れて「おはよう」と声を掛けるとそれぞれが反応し、今朝の状態を報告してくる。

「おはようございます。本日もよろしくお願いします」

正常ならそうアナウンスするが、不調のエラーが出ると、早急にメンテナンス業者を呼ばないといけない。
ここ数年でそういうケースが着実に増えている。
本部が、耐用年数を超えた古い機器をいつまでも配置し、それに加えとうとう修理不可能となったロボットの代わりに中古品ばかり現場に投入するのが、主たる原因だ。
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