第5話

文字数 587文字

そんなわけで、今日も無事11時に開店し、正午前からようやく来客が増えてきた。
来客アナウンスが聞こえるピッチが速まってくる。

キッチンは、おしなべて手堅く料理を上げてくるが、たまに料理をこぼしたり、焼きすぎて焦がしたり等の調理ミスをする。

また料理が立て込むと、オーブンの中の温度が下がり焼けるのが遅くなるし、フライパンを立て続けに使うと、元が熱いから同じ時間をかけて調理すると焦げやすくなる。そこで勘による微調整の指示を出すのも俺の業務である。

注文はテーブル設置のタブレットから、直接キッチンに入ってくる。
その内容はデシャップのモニタ端末で確認でき、キッチンのロボットは注文内容を受信して調理を始める。
滞っているポジションがあれば、セット料理について、あえて調理を遅らせる必要も出てくるので俺は他のポジションのロボットに修正指示を出す。

「いいか? フライヤーの料理が遅れている。オーブンに入れるセットのグラタンは手前の方に置いて、ゆっくり焼くんだ」
「わかりました」
「3番テーブルの料理、提供時間が15分を超えそうだ。サラダだけでも先に出してくれ」
「わかりました」
「ウェイティング発生です」
「何名様がお待ちだ?」
「3名様です」
「オッケ、次の下げ物は4名テーブル優先でヨロシク!」
「わかりました」
いつもこんな調子だ。
俺も機械の一部になったような気分になる。感情の入る隙はあまりない。
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