第15話

文字数 396文字

本部にはAIロボットもいるらしいが、社長のムラカミは生身の人間だ。
それだけに、日々老いていくのがよく分かる。
たまに電話を掛けてきては、壊れたテープレコーダーかAIロボットのように「とにかく経費節減をテーマにやってくれ」と言っている。
人口減少社会においては、AIロボットの消費活動開始はあるものの売上を確保するのは楽ではない。ならば、経費を極限にまで減らして利益を上げるのが商売の常道となる。

「いいか? AIロボット導入で人件費ゼロで水光熱費、消耗品費が固定化されつつあるわけだ」
この男、ムラカミは、たかだか小さな会社の社長というだけで、上から物を言いたくなるらしい。だから小さいままなのだが、これはこの会社にいる最後の日にまで取っておく“提言“だ。

「俺の給料に至っては、とうの昔のまま固定化しているが?」

ムラカミは、短く笑った。
俺がジョークを飛ばしたのだと思ったらしい。
本当におめでたい男だ。



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