第五話:戦後政略の渦中・1

文字数 576文字

『誰かが待ち望んだ、その日。

 物語の始まり。』


◇---------------------------


「ふう。――もうすっかりいつもの日常ねぇ」

 戦争終結から七日が経った。


 リプカの呟き通り、一週間が経った今、ほとぼりが冷めたように、状況はもう戦争前の日常と変わらなくなった。


 そもそも、ウィザ国内ではほとんど戦火は上がっていない。フォローライン領域での防衛戦、リヴァレーエリン領域が破られフランシスが本腰を入れ指揮に回った【リヴァレーエリン領域の防衛・奪還戦】、そしてリプカが状況を収めた《《あのとき》》を除き、国内は平和なものだったのだ。故に戦争前の日常に戻るのも早かったのだろう。

「フランシスは相変わらず忙しそうだけれど……大丈夫かしら?」
 妹が世界的に名を馳せる指導者になったという、幼少から予期はしていた大事(だいじ)が過ぎる現実にそわそわした気持ちを抱きながら、リプカはフランシスの健康無事を祈った。
(意外と無理をする性分だから、あの子は……)

 そんな、外側の遠い場所で起こっている大事(おおごと)を思うように、心配を向けるリプカだったが――それはとんでもない思い違いを孕んだ話であった。


 事は他人事ではなく、むしろ世紀の騒乱は内々で始まろうとしている、我が事であったことを、リプカはその後、すぐに理解することとなる。


 奇妙な運命が始まる。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

リプカ・エルゴール

フランシス・エルゴール

クララ・ルミナレイ・セラフィア

ティアドラ・フォン・レイデアル

クイン・オルエヴィア・ディストウォール

ビビ・アルメアルゥ

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色