第五の王子・3
文字数 959文字
リプカと並んで中庭を歩きながら、アズナメルトゥは眉をハに下げた明るい笑顔をリプカに注いだ。
リプカはその、己とは正反対の属性を宿した明るさに、未だたじろぐばかりでいる。
地上を色鮮やかに照らす太陽のような明るい笑顔が曇ったことに、なぜだかとてつもない罪悪感を覚え、リプカはもごもごと返事した。
僅かな間だけ、気落ちした表情で視線を下げていたアズナメルトゥだったが、すぐに、先程までと比べるとやや作ったような明るい顔をリプカへ向けた。
この短時間で再び起きた、今までの人生において一度もなかったはずの未曾有に、リプカは飛び上がった。
途端に、アズナメルトゥの表情が再び曇る。
リプカが慌てて首をぶんぶん横に振ると、曇り空が晴れ、再び屈託のない明るい輝きがリプカを照らした。
リプカが頭を下げると、アズナメルトゥは腰を下げリプカと視線を合わせると、にっと無垢な表情を見せた。
「よろしくね。奇妙な縁だけど、リプカちゃんと友達になれる機会になったからよかった! ねっ! ――ね、ね、今度一緒にどこかでお洋服買いに行こうよ! 私こっちの国の服とかもチョー興味あるから、案内してくれると嬉しいな!」
どうしたらこのようになれるのか――。
怒涛のような会話量に圧倒されながら、再びそんなことを思って――両親から与えられたものとフランシスに買ってもらった服以外の一つも持ち合わせていないリプカは、さてアズナメルトゥの趣味に寄り添うためにはどうすればいいのかと、頭を悩ませていた。
内心、大切なものを送ってもらった子供のように、気持ちを浮き足立たせながら。