第9話【『泣いた赤おに』を読書感想文から考える①~現代っ子に必要なスキル?~】

文字数 2,652文字

ようやく本編が始まったにも関わらず、早速脱線してしまった前回に続き、今回も少し脱線した内容になります。
当初の予定では"おじさんが童話を真剣に読んで考えたこと"を綴っていくのが『童話とおじさん』の本編だったのですが、いつの間にか"おじさんが童話について考えたこと"の方が多い状態になってしまいました。
そして今回。タイトルにもあるように『泣いた赤おに』にをテーマにすることになりました。
本編が、予定を立てて読み進めた童話の解釈とするならば、今回は予想外に出会った童話の解釈なので、番外編のようなものになります。
予想外に再会した童話『泣いた赤おに』。今回はこの物語について考えたことを綴りたいと思います。

山形県高畠町に"浜田広介記念館"があります。童話"泣いた赤おに"の作者である浜田広介氏の
記念館です。詳細はHP等をご覧頂ければと思います。
今回、たまたま家族でそちらへ出掛ける機会がありました。実際に訪れてみて急に思い出したのですが、どうやら僕は、小学生の頃に一度記念館を訪れていたようでした。あいにく、その時のことはほとんど覚えていませんでしたが…。恐らく30年振りくらいの再訪となりました。
言わずと知れた浜田広介氏の名作童話"泣いた赤おに"。人間と仲良くしたい赤おにと、そんな赤おにの助けになりたいと、自分を犠牲にして仲立ちを図った青おに。そんな二人の友情を描いた物語です。この物語に、皆さんはどのような感想をお持ちでしょうか?
僕が初めてこの物語に出会ったのは、テレビの教育番組(現Eテレ)だったような気がします。
まだ幼いなりにも、青おにの自分を犠牲にした友情は凄いなぁと思った記憶があります。
あれから数十年、それ以上の感想を抱くことなく過ごし、急に再会した今回。大人になった視点で触れる物語は、やはり昔とは違って映りました。

そんな僕のどーでもいい感想は最後に述べることにしまして、何よりも先に、記念館に設けられていた"読書感想文"の閲覧コーナーについて触れたいと思います。
泣いた赤おにを読んでみての読書感想文。その入賞作品を自由に閲覧できるコーナーで僕は足を止めました。
小学校4~6年生の感想文をいくつか拝見しました。自分も同じように友達と別れた経験を綴った子や、自分なりの解釈を綴った子など様々な感想が寄せられており、何十年にも渡って愛される物語の力に驚いたのと同時に、今の子ども達の感想文のレベルの高さにも大変驚かされました。「えぇ~…小学生でもうこんな風に思えるんだ。すげぇなぁ」と、おじさんは完全に敗北です。
「青おにが偉いと思った。僕も青おにのように困った友達がいたら助けられるようになりたい」
「赤おにが人間と仲良くなれて良かった。けれど、最後に青おにがいなくなって可哀想だった」
ーーのような、僕が小学生の頃の"あらすじに沿って思ったこと"をただ書き連ねるただの"感想"文ではないのです。
「青おには赤おにの為にああしていたけれど、僕はこうした方が良かったと思う。なぜならーー」
「赤おには青おにの提案を受け入れていたけれど、私はそれは違うと思う。なぜならーー」
ーーのように、作者の考えた物語にただ沿うのではなく、自分なりの意見を…なんなら原作を否定するくらいの勢いで綴っているのです。

これって凄くないですか?

だからこそ、入賞レベルなのかもしれませんが、少なくとも僕がイメージする読書感想文とは、物語を通して"共感できたこと"を中心に組み立てられていたはずでした。ところが、この度出会った感想文には"なんか違うと思ったこと"だけでなく"自分だったらこうする"という、自分の考えまで綴られていたのです。例えばーー
「赤おには、青おにの事を本当に大切な友達と思っているなら、青おにを悪役にする案には乗らないで、二人揃って人間と仲良くなれる方法を考えるべきだったと思う」
「青おにも、赤おにの本当の友達なら、自分がいなくなることで赤おにがどんな気持ちになるのか考えるべきだったと思う(※これらの感想文は実在しませんよ)」
ーーのような感じでしょうか。
子ども達は、人間と仲良くなれた赤おにに「良かったね」と共感するのではなく、自らを犠牲にした青おにを「偉かったね」と労うのでもなく、結局悲しい結末を迎えることになった二人の選択を否定し、怒っているのです。

ーーそんなの、本当の友達のすることじゃないよ!って

これって凄くないですか?(2回目)
もちろん、物語に正解はありませんから、子ども達がどう感じるのかは自由です。それでも、完成された物語というものは、言わば正解のようなものですから、僕が幼い頃は物語の登場人物の選択を否定するなんて想像すらできませんでした。
目の前にあるものにただ共感するだけでなく、異論を唱えて自分の考えを述べる力。それが、今の時代を生きる子ども達には必要で、当たり前にできるべきスキルなのかもしれないと思うと、頼もしいなぁ…なんて勝手に思ってしまいました。僕は自分の意見を言って相手と衝突する位なら、相手の意見に流される方を選ぶ人間なので…。
おじさんになって涙腺と感情の波が不安定になっているせいか、それともただの考えすぎか。僕にとって、この読書感想文の閲覧コーナーが、記念館で最も心に刺さった出来事になってしまいました。記念館スタッフの皆さん、大変申し訳ありません。
もちろん、泣いた赤おにの物語は大好きです。記念館内のミニシアター?で流されている泣いた赤おにでは、しっかり泣かせていただきました。懐かしい昭和感漂う人形赤おにのラストの泣き顔は必見です!あと、浜田広介氏の別名でのデビュー作?"黄金の稲束(コガネノイナタバ)"も良かったです。気になる方は検索してみて下さい。そして、コロナ禍が終息した暁には、ぜひ記念館に足を運んでみて下さい。
というわけで、泣いた赤おにとその読書感想文から感じたことを綴らせていただきました。

さて、ここから急にハンドルを切ります。
読書感想文の中で、子ども達は"自分なりにこうするべきだったと思う泣いた赤おに"を考えていました。これって、何かに似てるなぁと考えたところ、二次元創作と一緒じゃないか?と、おじさんは変な着地点を考えてしまいました。
次回は泣いた赤おにの読書感想文から感じたことを、二次元創作と無理矢理絡めて考えてみたいと思います。
自分が青おにだったら、どうやって赤おにの悩みを解決させてやろうかなぁ…そんなことを考えている、今日この頃です。

つづく…
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