第8話【童話とアニメ絵②~名作小説の漫画化と表紙の変化~】

文字数 2,085文字

今回は"名作小説を漫画で読む"ということについて考えてみる所から始めたいと思います。
前回、童話のイラストのアニメ絵化には、現代の子ども達に興味を持ってもらう為という意図がある。ということに触れさせていただきました。今回のテーマも、形式は違えど"子ども達に触れてもらいたい"という目的では同じなのではないかと思い、考えてみることにしました。

僕の過去を振り返ります。
僕が幼い頃、家に漫画版の"坊っちゃん"がありました。言わずと知れた夏目漱石氏の名作、坊っちゃんを子どもに向けた漫画にアレンジしたものです。
幼い頃の僕や兄がそれをねだるとは思えませんので、恐らく両親が購入したか、親戚からもらったか…。とにかく、幼い頃の僕は漫画という形で初めて坊っちゃんを知り、手にとり、読みました。
ここからは想像ですが、一番最初に文豪の名作小説を漫画化させようと言い出した人は誰なのでしょうか。そして、その方は批判を浴びなかったのでしょうか。
「夏目漱石先生の作品を漫画にするなどけしからん!」
「先生の綴った文章を通してこそ、この本の真の素晴らしさが伝わるのだ!」
きっと今よりもいろんなことが厳しい時代だったでしょうから、そんな向かい風は全く吹かなかったとは思えません。
「確かに、先生には失礼に当たるかもしれません。しかし、私はより広い世代にこの作品が浸透し、永く語り継がれることの方が大切だと思うのです!」
その方がこんな風に言ったかどうかはわかりませんが、"それ"を企画した当時の大人達のおかげで、当時の幼い僕の元に坊っちゃんが届いたのは事実です。

時は少し流れ、確か中学生の頃でした。学校で本を販売することがあり、その時小説版の坊っちゃんが扱われていたのを覚えています。
その表紙には中学生の僕達の世代に向けた、割りとポップなイラストで描かれた坊っちゃんが腕を組んで立っていたことを覚えています。確かに、少年時代の僕は、タイトルよりもそのイラストに目を惹かれ、購入をしようか迷ったことを覚えています。

更に時は流れ、これと同じような現象は、近年の本屋さんでも起きました。某有名漫画家さん達が某名作小説の表紙を手掛けるというコラボ企画。皆さんも目にしたことがあるのではないでしょうか。僕の好きな漫画家さんも企画に参加されていたので、数年経った今でも表紙のデザインは覚えています。プロフィールにも記載した通り、僕は難しい文章を読むのが苦手なので、ページをめくるまでには至りませんでしたが…。それでも、聞いたことはあるけれど読んだことのない文豪達の名作に興味が向いたことは間違いありません。

童話のアニメ絵化。
名作小説の漫画化。
名作小説の表紙の変化。

この3つ、違いは"向けた年代"というだけで、もっと広く浸透させたいという製作側の想いは、どれも一緒なのかもしれません。 以前、第3話でも触れたように、子どもにウケる作品を考える製作する側の大人の力だと思います。
"こういうアレンジをすれば、今の子ども達(や若者)にも浸透するんじゃないか?"
時代の流れに自分の感覚を合わせ、常に変化を考えていく。…凄いパワーだと思います。

話を戻します。
坊っちゃんに限らず、「漫画で読む◯◯」という本は今では多岐に渡っており、もはやジャンル化しているといってもいいのではないでしょうか。子ども達はもちろん、僕のような読解力が未熟な大人にもわかりやすく、大変有り難い存在です。
もちろん、文豪の皆さんも人間ですから、「俺の作品を漫画化するなんて絶対認めん!」と思う方もいれば、「どんな形にアレンジされても、時代を越えて受け継がれるのは嬉しいねぇ」と考える方もいらっしゃるかと思います。
この件については、きっと全てに当てはまる大正解はないと思います。ただ、もしも大間違いがあるとすれるならば、作者の意に反した形でアレンジすることではないでしょうか。だからこそ著作権は大切にしなければならないのだとも思います。大切なのは、作品を通して作者が一番伝えたいことは何なのか。それを守っていくことなのではないか、と。

とは言え、いつかは変化をしなければならない時がくるのも事実です。どんなことでも"継続"よりも"変化"の時に大きなパワーが必要になります。変わることは挑戦であり、不安も大きいと思います。そんな中で声を挙げ、新しい道に舵を切ることを唱えた人は本当に凄いと思います。

ーー作者達の信念を守りつつ、時代に合わせた変化を加え、永く愛される作品にしよう!

そんな考えの人達がいたからこそ、名作小説は漫画になり、童話の絵はアニメ絵化したのではないでしょうか。
名作小説の漫画化が今ではスタンダードになったように、童話がアニメ絵化することも当たり前になる。そんな時代が、既にやってきているのかもしれません。

今回も随分強引に、ややこしく考えてみました。ぜひ、いつものように聞き流していただければ幸いです。
童話のアニメ絵、まだ見慣れないなぁ。時代の変化に感覚を合わせるのって、結構パワー使うんだなぁ…。そんなことを考えている、今日この頃です。

つづく…。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み