第10話【『泣いた赤おに』を読書感想文から考える②~二次元創作を絡めて~】

文字数 2,192文字

前回、"泣いた赤おに"の作者のである浜田広介氏の記念館を訪れたことから始まり、館内に設けられた小学生の読書感想文の入賞作品に感銘を受けましたーー…という内容で綴らせていただきました。
今時の子ども達は"目の前にあるものにただ共感するだけでなく、異論を唱えて自分の考えを述べる力"が備わっているんだなぁと。
その力が、二次元創作と似ているのではないか?という、今回も強引な思い込みと屁理屈をこねながらいきたいと思います。

二次元創作の意味を調べると、"既存の作品を何らかのかたちで利用し、派生的に新たな作品を創作する表現行為"と出てきます。

どうでしょう?泣いた赤おにの感想文として、「自分だったらこうする」と綴った子ども達と似ていませんか?
無理矢理言い換えれば、原作とは違った展開、違った結末を望んだ子ども達が、自分達なりに泣いた赤おにの二次元創作案を考えたといっても大間違いではないのではないかと。
僕が幼い頃、今ほど二次元創作は活発には行われていませんでした。そもそも、そんな言葉自体、聞いたこともありませんでした。もちろん、僕が知らなかっただけの可能性も十分にありますが…。
そんな僕が初めて二次元創作っぽい作品に触れたのは、小学生の頃の某有名ゲームの4コマ漫画集だった気がします。
よく知っている登場人物達を、原作者とは違った漫画家さんが、原作と似ているけどどこか違った顔と設定で描いているという不思議な違和感。これが二次元創作の醍醐味の一つではないでしょうか。
今では二次元創作も活発に行われており、下手をすれば原作を凌ぐ程の傑作も生まれているとか、いないとか…。子ども達の創作スキルが上がっているのと同様に、大人達のスキルも上がっているのは間違いありません。
"文字"や"製品"など、遥か昔から"応用"や"加工"が得意な日本人の遺伝子がそうさせているのでしょうか?二次元創作は、まさに応用力が成せる技だと思うのです。
「この物語がこんな風になったらもっと面白い!」
という原動力を燃やして。
二次元創作は、そもそもそんな日本人向きのスキルだったのかもしれません。だとすれば、漫画やアニメが日本の文化として台頭してきたのも自然なことなのかと、僕は勝手に頷けます。日本人の二次元創作技術の高さ故のものだと。
……いつの間にか、二次元創作肯定論のようになってしまっていました。

話を童話に戻します。
そんなわけで、泣いた赤おにに物申していた子ども達の感想文に二次創作力の高さを感じたおじさんは、驚いた。ただそれを回りくどく言いたかった。それだけなのでした。
最後に、誰も気にしていないだろう、僕の感じた"泣いた赤おに"の感想を述べて、今回の屁理屈を終わりにしたいと思います。
子ども達の感想文に習って、自分だったら赤おに、青おにの選択をどう思ったのかを軸にして考えてみました。僕は二人の選択は原作通りが一番良かったのではないかと思います。
赤おには青おにの提案に乗り、青おには赤おにのもとを去って行く。そんな悲しい結末。だからこそ、泣いた赤おには永く愛される名作になったんだと思います。
例えばこの物語が、赤おにが青おにの提案を受け、村人達の前で青おにをこらしめ村人と仲良くなる。その後、実は"あれ"は演技であることを村人達に伝え、青おにも交えてみんなで仲良くなりました。めでたしめでたし。
もしくは、演技とはいえ親友の青おにをこらしめることなどできないと思った赤おには、村人と仲良くすることをあきらめ、ずっと青おにと仲良く暮らしました。めでたしめでたし。
果たして、こんなストーリーが原作程に人々の心を振るわせることができるでしょうか。泣いた赤おには"悲しい結末"だからこそ、名作なのではないでしょうか。
赤おには、どんな気持ちで青おにの提案に乗ったんだろう?
青おには、どんな気持ちで赤おにに提案したんだろう?
赤おには、どんな気持ちで青おにの家に残された看板を読んだんだろう?
青おには、どんな気持ちで赤おににメッセージを残したんだろう?

ーードコマデモ キミノトモダチ

どこまでも友達って、どういう意味なんだろう…って、思いませんか?
この童話程、登場人物の気持ちを考えさせられる物語はないのではないかと思います。
そして、子ども達がそうしたように、「きっとこうした方が良かった」と、登場人物にアドバイスをしたくなる物語も、他にはないのではないでしょうか。
"善行を行っていればいつか救われる"
"悪事を働けばこらしめられる"
そんな風に、童話を通して決まった教訓を伝えるのではなく、受け取る側が自由に感じ、考え、そして反論さえもしたくなる。
赤おにと青おに、二人の正解のような不正解を選択するところが、間違いを犯す人間臭さを感じさせ、親近感を強くさせるのだと思います。まるで友達の身に起きた出来事のように。
当事者であり、タイトルの通りに涙を流した赤おにには辛い出来事なのでしょうが、彼らの物語からメッセージを受け取る側の我々にとっては、このやりきれない結末こそが大切なのではないかと考えてしまうのです。
長くなりましたが、そういった理由で、僕はこの童話はこのストーリーこそが一番だと思います。

ひょっとしたら、浜田広介氏もこの物語を通して子ども達にもいろいろ考えて欲しかったのかなぁ、そんなことを考えている、今日この頃です。

つづく…。












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