最終話 これにて一件落着

文字数 1,257文字

 手当てを受けたランを囲み、しのぶとアメイシャ、夕暮は顔を見合わせる。

 お父様が決めた 一族の掟は絶対
 それを破れば 死よりも厳しい罰が待っている
 アメイシャはもちろん
 自分の責任を果たさなかったしのぶも
 厄介ごとを持ち込んだ夕暮も
 三人ともただでは済まない

「このまま死んでもらうのが一番なのですけれどね」(むーっ)アメイシャが頬を膨らませる。
「気に入りませんか」としのぶ。
「だってこんなに面白いこと、私の人生でもう起こらないかもしれませんもの」

 アメイシャは娯楽に飢えていた
 成長した彼女は 見ず知らずの男に 売られるように結婚し
 一生をカゴの中で暮らす

「私はラン様に身を捧げた女です。最期まで彼に付き合います」と夕暮。

 私はこの方を愛してしまったのですから

 しのぶは、ぎゅっと刀の柄を握る―――何を迷うことがあろうか。
 もともと殺すつもりで刀を振ってきた。だがなぜだ。なぜ……。
 しのぶは泣いていた。
(どうして、しのぶちゃんはこの仕事をしてるんだ?)
(俺は君が欲しい!)
 殺すことぐらい、簡単だったはずなのに。

 そんなしのぶを見つめる、アメイシャ。
(きゃる~ん)「そうだっ」(ぱちりっ)アメイシャが指を鳴らす。
「私はこの方が本当に男であるという確信がありませんわ。だって下半身を見たわけじゃあありませんもの」
「まぁそれはそうですが」しのぶは主人が何を言うか不安そうにしている。
「身体検査したいところですけれど、私自身が見るわけにはまいりません。もし本当に男だったら、第四夫人末女としての価値に響きますもの。しかし都合のいいことに、この人を身体検査したことがあるメイドがいらっしゃいます。証言していただきましょう」
 夕暮は(きりっ)として即答する。「ラン様は女でしたわ」
「そういうわけです」アメイシャはほほえむ。「この方を殺す必要はありません。夕暮はご自分のプライベートの友人を招いただけです。だめなことですが、まぁ、私は十分に楽しんだので今回のところは不問といたしますわ」(ちらっ)「でもランちゃん。理屈は理屈です。自由放免というわけにはいきませんわよ……」アメイシャはランを見る。ランは薄目を開けていた。

 あなたは今日から私のものです
 私のことを 楽しませてね

 アメイシャがランのあごを撫でる。
「女は?」ランは訊いた。「女をお触りできないぐらいなら、俺は死んだほうがマシだ」
(にまっ)「この島にはたっくさんの女がおりますのよ。それに、しのぶをランちゃんのお目付け役にいたしますわ。いいわね、しのぶ」
(えっ)「お嬢さま⁉」
「それからしのぶ、この方にあなたのパンツを一枚差し上げなさい」
「お嬢さま⁉」
「それから———夕暮」
 名前を呼ばれた。
 夕暮は驚いて目を丸くした。
 アメイシャがほほえんでいる。
「この方にお部屋を用意してね。できれば、人目につかないところがいいのだけれど」
 夕暮は(はっ)として(にっこり)笑った。
「はい、地下牢に空きがございます」
 アメイシャは(ぱんっ)と手を鳴らした。「これにて一件落着」
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