第52話 男と女の婚活物語 エピローグ
文字数 1,201文字
「見て。和葉さん、あんなに幸せそう」
結婚式の当日、小石川祐子は隣に座っている新郎――戸高泰宏に笑顔で声をかけた。和葉と葉月が家族になった理由を夫から聞いたため、妬む気持ちはなくなっていた。
それでも勝手に勝負を挑んだ身ではあるが、敗北の悔しさは残っているので、実家へ遊びに来た際には多少からかってやろうかなと企んでいる。
「本当にそうだね。といっても、俺の力じゃなくて、春道君の心遣いのおかげかな」
祐子たちが指揮を挙げている間、高木春道たちも家族だけで結婚式を行ったみたいだった。
実際にどのような式だったかは見ていないのでわからないが、春道たち家族の楽しそうな様子を見てれば、素晴らしかったであろうことは容易に想像がつく。
以前なら高確率で羨んだろうが、現在は祐子も立派といえるかどうかはわからなくとも、お嫁さんになっている。
女性全員の夢とまでは言うつもりないが、やはりこうして披露宴を行えば、胸に熱いものがこみあげてくる。きっと、和葉も同様の感想を抱いてるはずだ。それだけ結婚式や披露宴というのは、特別なイベントなのである。
さすがは名家の当代というべきか、披露宴にはたくさんの人間が参加してくれた。もちろん祐子の両親もいる。
笑ったり泣いたりしながら披露宴は進行し、やがて楽しい時間も終わりを迎える。出席者へのお見送りも無事にこなし、緊張とともに辿りついた式及び披露宴が終了した。
春道たちは自分の家へ戻っている。
二次会、三次会は行わず、祐子たちも帰宅していた。
時刻はすっかり夜になり、空には綺麗なお月様が浮かんでいる。あと数時間で今日という舞台が閉幕する。
シンとした空気の中で、賑やかだった披露宴の余韻に浸る。
縁側に座っている祐子の隣には、正式に夫となった泰宏がいる。
そういえば祐子も戸高姓になったのだ。
なんだか不思議な感じがして、自然に笑みがこぼれた。
「どうかした?」
夫が尋ねてくる。結婚前と結婚後で態度が変わったりもせず、出会った頃と同じ笑顔を見せてくれている。
「結婚したんだなぁ……って思っただけ」
「そうなんだ」
人によっては素っ気無いと思うかもしれないが、これが夫に選んだ泰宏という男性なのである。相手の言葉を深読みしたりせず、そのまま受け取るのが正しいコミュニケーションのとり方だった。
「私をお嫁さんにできて嬉しいでしょ」
「ああ。俺は世界一の果報者だよ」
恥ずかしがりもせず、満面の笑みで歯が浮きそうな言葉を返してくれる。だいぶ慣れてきたのもあり、祐子も必要以上に照れなくなっていた。
交際期間はそれほど長くなくとも、夫婦の相性には関係ない。少し風変わりな男性だけれど、ずっとこの人の隣を歩いていこう。祐子は心の底からそう思っていた。
「少し冷えてきたわね。温かいお茶でも入れる? あなた」
「ああ、ありがとう」
祐子と泰宏がともに歩く人生は、まだ始まったばかりである。
結婚式の当日、小石川祐子は隣に座っている新郎――戸高泰宏に笑顔で声をかけた。和葉と葉月が家族になった理由を夫から聞いたため、妬む気持ちはなくなっていた。
それでも勝手に勝負を挑んだ身ではあるが、敗北の悔しさは残っているので、実家へ遊びに来た際には多少からかってやろうかなと企んでいる。
「本当にそうだね。といっても、俺の力じゃなくて、春道君の心遣いのおかげかな」
祐子たちが指揮を挙げている間、高木春道たちも家族だけで結婚式を行ったみたいだった。
実際にどのような式だったかは見ていないのでわからないが、春道たち家族の楽しそうな様子を見てれば、素晴らしかったであろうことは容易に想像がつく。
以前なら高確率で羨んだろうが、現在は祐子も立派といえるかどうかはわからなくとも、お嫁さんになっている。
女性全員の夢とまでは言うつもりないが、やはりこうして披露宴を行えば、胸に熱いものがこみあげてくる。きっと、和葉も同様の感想を抱いてるはずだ。それだけ結婚式や披露宴というのは、特別なイベントなのである。
さすがは名家の当代というべきか、披露宴にはたくさんの人間が参加してくれた。もちろん祐子の両親もいる。
笑ったり泣いたりしながら披露宴は進行し、やがて楽しい時間も終わりを迎える。出席者へのお見送りも無事にこなし、緊張とともに辿りついた式及び披露宴が終了した。
春道たちは自分の家へ戻っている。
二次会、三次会は行わず、祐子たちも帰宅していた。
時刻はすっかり夜になり、空には綺麗なお月様が浮かんでいる。あと数時間で今日という舞台が閉幕する。
シンとした空気の中で、賑やかだった披露宴の余韻に浸る。
縁側に座っている祐子の隣には、正式に夫となった泰宏がいる。
そういえば祐子も戸高姓になったのだ。
なんだか不思議な感じがして、自然に笑みがこぼれた。
「どうかした?」
夫が尋ねてくる。結婚前と結婚後で態度が変わったりもせず、出会った頃と同じ笑顔を見せてくれている。
「結婚したんだなぁ……って思っただけ」
「そうなんだ」
人によっては素っ気無いと思うかもしれないが、これが夫に選んだ泰宏という男性なのである。相手の言葉を深読みしたりせず、そのまま受け取るのが正しいコミュニケーションのとり方だった。
「私をお嫁さんにできて嬉しいでしょ」
「ああ。俺は世界一の果報者だよ」
恥ずかしがりもせず、満面の笑みで歯が浮きそうな言葉を返してくれる。だいぶ慣れてきたのもあり、祐子も必要以上に照れなくなっていた。
交際期間はそれほど長くなくとも、夫婦の相性には関係ない。少し風変わりな男性だけれど、ずっとこの人の隣を歩いていこう。祐子は心の底からそう思っていた。
「少し冷えてきたわね。温かいお茶でも入れる? あなた」
「ああ、ありがとう」
祐子と泰宏がともに歩く人生は、まだ始まったばかりである。