その1 アカウント登録

文字数 966文字

時は夕刻。世間は長期休み。

積んでいたゲームもやり終え、暇を持て余す俺。

おやおや、なっさん。

随分と退屈そうな顔をしているねぇ。

今、お前を見てその退屈も吹き飛んだわ……。
あらあら、私を見た途端退屈が吹き飛ぶなんて。

ようやく私の魅力に気づいたのかな。

ちげーよ。

何で俺のトランクスを腕に巻いてんの?

なっさんの色々な汁が染み付いたこの布を装備すると

私の勇気が100倍になる気がしてつい……。

全ステータス+50ぐらい付きそう。

使用済みの奴じゃねーかそれ!

勇気100倍ってなんだよ。意味がわからん!

ていうか返せ!

ちっ。

朝から張り付いてやっと手に入れた絶品だったのに……。

朝……え?

おい待て、もう夕方だぞ。

お前、朝からずっと俺の部屋にいたの?

怖っ……。

私が居るの気づいてなかったんかい!

いや、流石だね……。


こいつは幼馴染の大文字恵美。

当たり前のように我が家の合鍵を作って、勝手に家に侵入してくる。

おまけに俺の服や下着を勝手に持っていく始末だ。

そろそろ警察に相談しようかと本気で考え始めている。

……あれ?

そういえばお前、何のゲームやってるんだ?

ああ、これ?

最近リリースされたMMORPGの『アンダーブレイク』だよ。

アンダーブレイク?

聞いたことがない名前だな……。

せっかくだからなっさんも一緒にやろうよ。

なっさんのパソコンには既にインストールしてあるから。

人のパソコンに勝手にゲームをインストールするな……。

というかMMORPGは大抵のものはアカウントが必要だろう。

俺はそのゲームのアカウントを登録したことなんてないぞ。

なっさんの分も既に登録してあるから大丈夫。

IDとパスワードもいつもの奴を入れておいたよ。

お前なんで俺が普段使ってるIDやパスワード知ってるの?

怖っ……。

なっさんの事なら大抵のことは分かるよ。

あ、そうそう。エロ画像が入ったフォルダは消しておいたから。

もっと分かりにくい場所に隠しておいたほうがいいよ。

がぁああああああっ……!

俺の秘蔵のコレクションっ……!

お前マジで何してくれてんだ!?

ふっ。

心置きなくゲームに没頭できる私の配慮だよ。


さあ、はよこのアイコンをクリックしろ。

アイコンおかしいだろ。

何でパンツ被ってんだよ。
他にない珍しいタイプだよね。

ほらほら、こ~んな感じで……。

わかった。プレイしてやる。

だから俺のパンツを被るのはやめろ。
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登場人物紹介

【七 茂夏(なな しげなつ)】

通称なっさん。

色々なゲームをプレイして遊んでるゲーマー。

その素顔は謎に満ちている。


市販のゲームは大抵遊び尽くしてしまう程暇を持て余しているが

別にニートというわけではないらしい。

ゲームは上手くプレイするより楽しんでプレイする派。


服や下着をよく盗まれ、

スマホに女の子の情報を登録すると消され、

お気に入りの夜のオカズを消される。

全て幼馴染である恵美の仕業。

色々と散々な目に遭わされている。


恵美の事はクレイジーな女だと思っており、

恐怖の対象であるが、何だかんだで一緒に遊ぶくらいには仲が良い。

【大文字 恵美(だいもんじ めぐみ)】

茂夏の幼馴染。

勝手に茂夏の家の合鍵を作り、

毎日のように茂夏の部屋に不法侵入している。

当たり前のように茂夏のパンツや靴下を持っていき、

コレクションとして自分の部屋にお持ち帰りしている。

色々と危ない。


独特の感性を持っており、

「なっさんの顔はとてもチャーミング」と思っている。


将来、茂夏の嫁になるために

茂夏の彼女になりそうな女を片っ端から調べて

徹底的にそのフラグをへし折っている。


茂夏の両親には既に『とても出来た女の子』と思わせており、

外堀は埋め終わっている模様。

じわりじわりと茂夏の背後から迫っており、

その背を捕らえるのはもはや秒読み段階。

ある意味ホラー。将来の山姥候補。

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