その8 満腹度

文字数 1,115文字

あっ……。

よく見たらもう1時過ぎてるな。

流石に今日はもう寝るか。

えー。

まだパーティー組んだばかりなのに。

まあいいや、じゃあ寝よう。さあどんとこい。

恵美は俺の布団に入って、

『おいでおいで』のハンドサインを出してきた。

一歩間違えればホラー映画に出てきそうだ……。

まるで捕食前の山姥だな……。

俺は寝袋を使って廊下で寝るから安心しろ。

誰が山姥じゃ。

いいから、こっち、に、こ、い~~~~!

恵美は羽織っていた布団を引っぺがすと、

凄い勢いで俺の手を掴んで引っ張ってきた。

があああああ!何てバカ力だこいつ!

ゴリラか貴様!

うら若き乙女になんて事を言うのじゃ!

もういい、一人で寝るもん!

バーカ!ホーモ!ヘタレ!クソジジイ!

クソジジイなのはゲームの中だけだろ……。
そして翌朝。

俺は恵美を布団で眠らせたことを後悔する。

なあ、俺の布団……

ネッチャネチャなんだがお前何した?

何もしてないよ。たぶん。
所々に噛み千切ったような痕があるんだが、

お前は猛獣か?

全く記憶にございません。
もう二度と俺の布団で寝かせねーわ……。
え~!?

せっかくなっさんの香りに包まれて寝れるのに!

確かにその香りにつられて噛み千切って咀嚼したけれど!

別に減るもんじゃないし!

やっぱり山姥じゃねーか……。

怖っ……。ていうか色々なもんが減ったわ。

まー、そんなことより早くゲームやろう。
あまり乗り気はしなかったが、

俺は『アンダーブレイク』のアイコンを

クリックしてログインした。

メリーナ:

きゃああ~☆

大変、大変、大変ですぅ!

うわ、出た……。

なんだいきなり。

メリーナ:

ご主人様の満腹度が0になってしまいました!

ああ、なんということでしょう……。

は……?

満腹度……?

あ、忘れてた!

このゲーム、満腹度システムがあるんだった。

0になると強制的に死亡扱いになるんだよ。

そのシステム必要か?
満腹度が多いと攻撃力が上がったりするからね……。

クソジジイは消費が早いから、ログアウトする前に

何か食べさせないと死ぬんだった……。

ネズミかよ……。

ていうかログアウトしている間も減るのかよ……。

リアル志向だからね。

リアルにする所をとことん間違ってるぞ……。

ん?まてよ。ってことは……。

メリーナ:

ですが安心してください!

私が責任を持ってセーブポイントまでお連れして、

満腹度を回復させちゃいまーす☆

[チャットログ]

餓死したため、人間の町に戻されました

まんどー:メリーナちゃんのおしょんしょん飲みたいお

ミサミさん:おしょんしょんは流石に引くわ……

☆ぺるーにゃ☆:変態だにゃ

まんどー:うるさいしね

マイケル:メリーナちゃん、ポゥ!

がぁぁああああ!人間の町ッ……!

俺の合計6時間んぁぁああああああ!

もう私のキャラで送ってあげるよ……。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

【七 茂夏(なな しげなつ)】

通称なっさん。

色々なゲームをプレイして遊んでるゲーマー。

その素顔は謎に満ちている。


市販のゲームは大抵遊び尽くしてしまう程暇を持て余しているが

別にニートというわけではないらしい。

ゲームは上手くプレイするより楽しんでプレイする派。


服や下着をよく盗まれ、

スマホに女の子の情報を登録すると消され、

お気に入りの夜のオカズを消される。

全て幼馴染である恵美の仕業。

色々と散々な目に遭わされている。


恵美の事はクレイジーな女だと思っており、

恐怖の対象であるが、何だかんだで一緒に遊ぶくらいには仲が良い。

【大文字 恵美(だいもんじ めぐみ)】

茂夏の幼馴染。

勝手に茂夏の家の合鍵を作り、

毎日のように茂夏の部屋に不法侵入している。

当たり前のように茂夏のパンツや靴下を持っていき、

コレクションとして自分の部屋にお持ち帰りしている。

色々と危ない。


独特の感性を持っており、

「なっさんの顔はとてもチャーミング」と思っている。


将来、茂夏の嫁になるために

茂夏の彼女になりそうな女を片っ端から調べて

徹底的にそのフラグをへし折っている。


茂夏の両親には既に『とても出来た女の子』と思わせており、

外堀は埋め終わっている模様。

じわりじわりと茂夏の背後から迫っており、

その背を捕らえるのはもはや秒読み段階。

ある意味ホラー。将来の山姥候補。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色