小説

エピソード文字数 975文字

「飛騨君、読んだわよ、飛田礼の新作。『聖徳太子の志能便(しのび)』って、どうして、いつもそんなマニアックな作品を書くの?」

 神楽舞はいつもやられてる腹いせとばかりに飛騨にツッコミを入れた。

「いいんですよ。ブックマークが5つで、評価ポイントが30ポイントで、日間ランキングなんか載らなくても。楽しんで書いてるんだから」

 Skype越しの声はいつになく弱々しい。

「そうね。元々、『作家でたまごごはん』の潜入調査が目的で登録したんだから、小説の内容は関係ないしね」

 嫌味を言ってやった。
 はあ、すっきりするわ。

「舞さん、そんなことより、神楽坂舞子の『お嬢様は悪役令嬢』は好調じゃないですか! ブックマーク5千オーバー、評価ポイントは12000ポイントだと、もうすぐ書籍化あるかもしれませんよ」

「いやー、困ったなー、ちょっと趣味で書いただけなのに、才能って恐ろしいわね。ほほほほほ」

 いや、笑い方が悪役令嬢になっちゃった。

「しかし、運営スタッフさんはみんなアカウント持ってるのですか?」

「そうね。小説投稿サイトを作るぐらいだから、みんな小説が好きなのよ。ほとんどの人が小説書いて投稿してるのよ」

「そうなんだ。運営も中の人は人間ですし、規約違反だとしても、苦労して書いた投稿小説を削除する時はつらいでしょう」

「正直、つらいわ。でも、規約違反を放置するとこのサイトの公平性が保てないし、仕事だと割り切ることにしてるわ」
 
 ふと、ため息がでる。

「そうですね。まあ、僕も仕事ですし、仕方ないと思っています」

 今日はなんだかいいことを言う飛騨君だわね。
 
「あれ、これは………」

「どうしたの? 飛騨君」

「いや、複垢のアカウント削除したら、僕の作品のブックマークが2に減って、評価ポイントが10ポイントに減っちゃいました」

 飛騨の声に力はなかった。

「飛騨君………」

 ちょっと切ないわね。

 三月初旬である。
 春のBAN祭りは、まだまだ続く。



(あとがき)


 今回のお話はちょっといい話でしたね。
 ラストは切ないけど。

聖徳太子の志能便(しのび)っていたらしいです。
http://www.2nja.com/what_2nja/oldest_2nja.html   
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登場人物紹介

某IT企業に勤務する《複垢調査官》飛騨亜礼(ひだあれい)。

巨大小説投稿サイトの運営スタッフの神楽舞(かぐらまい)。

巨大小説投稿サイトの二代目運営リーダー坂本マリア。

巨大小説投稿サイトのバイトリーダーメガネ君。

対怪異戦闘の専門家で道術士の風守カオル。

風守カオルの使い魔の道神、悪童丸(あくどうまる)

神沢優(かみさわゆう)


神沢勇の姉。公安警察、秘密結社<天鴉(アマガラス)>のリーダーでもある。

チャラ夫君

空気は読めないが、優秀な巨大小説投稿サイトのプログラマー。

織田めぐみ

茶人である織田有楽斎の子孫で、巨大小説投稿サイトのバイトのひとり。

ハネケ

メガネ隊の新人。<刀剣ロボットバトルパラダイス>のプレーヤー。
金髪碧眼のオランダ人ハーフ。 

夜桜

メガネ隊の新人。<刀剣ロボットバトルパラダイス>のプレーヤー。
黒髪に黒いくさび帷子を愛用。 

竜ヶ峰雪乃丞(りゅうがみねゆきのじょう)

<刀剣ロボットバトルパラダイス>などのネットゲーもリリースするマルチメディア企業IMT.com会長。


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