ユーチューバーの真似して万引きする小中学生「お金返したら大丈夫なんでしょ?」

文字数 3,217文字

「PTAから苦情殺到です。万引きしてもお金返したら大丈夫なんですよね?という小中学生が全国が増えてるらしくて、ユーチューバーカエル氏の影響でしょうね。ユーチューバーの視聴者は小中学生多いですからね。うちのボスがこれから記者会見開くようです」

 <バリュ-スター>の運営担当の<さえさえ☆>がいう。
 そこは<バリュ-スター>京都本社会議室である。
 ユーチューバーカエル氏は、今回の<バリュ-スター>の売り抜けで得た利益を返金するとして事態の火消しを図っていた。

「ボスって、社長さんの山本次郎氏?」

 神楽舞は一応、社長の名前は知ってたようだ。

「そうです。シリコンバレー帰りの連続起業家(シリアルアントレプレナー)にして投資家の山本次郎。<ハロージロネズミ>とも呼ばれています」

 仇名(あだな)の意味は不明である。
 ただ、作者が『ハローハリネズミ』ファンであるのは確かである。

「お、会見始まるね」

 飛騨がテレビのチャンネルを山本次郎氏の会見に合わせた。
 トレードマークのハリネズミのTシャツとGパン姿である。
 なかなかのイケメンで、とても40代には見えない。

「えーと、この度はユーチューバーカエル氏の件でお騒がせしています。顧問弁護士にも相談中ですが、現状、今回の全取引について消費者保護の観点からキャンセル、返金させて頂きます。<バリュ-スター>は株や金融商品ではありません。あくまで、頑張っている人を応援するためのツール、仕組みです。一番大事なのは<バリュ-スター>発行者と支援者の信頼関係です。それを裏切ったユーチューバーカエル氏には今回の<バリュ-スター>の売買益と同等のマイナスバリュースター6000万円を適用します。とりあえず、償いのために当分、ただ働きしてもらいます。それと共に朝倉財務金融相とも相談した結果、今回は公序良俗を乱した罪もありますし、万引きした後にお金か返してもダメなように、<バリュ-スター>社としても、詐欺事件として正式に訴えさせていただきます」  

 当然と言えば当然の対応であるが、刑事罰に加え、罪を償って出所しても6000万円の借金を背負わされることになる。
 小中学生の万引き事件多発の火消しもこれでできるだろう。

「一応、<バリュ-スター>は株ではなく、クラウドファンディング寄りの個人支援サービスというスタンスを貫くみたいだな」

 飛騨が感想をいう。

「そこはボスも筋は通してくれましたね。法律うんぬんの前に<バリュ-スター>には<バリュ-スター>の理念があり、それを貫くのが大事だと私も思います。確かに<バリュ-スター>はその成長性から投機的な取引が先行したけど、社長の意向によると、これからはプロジェクト限定<バリュ-スター>発行というクラウドファンディング的なシステムも実装してやっていく予定になってます」

 <さえさえ☆>には規約の整備も含めて青写真が見えてるようだ。 

「だけど、サブちゃんねるでユーチューバーカエル氏の住所などが特定されて、家にゾウガメ100匹とか、300万円の巨大ロボが着払いで送られてる件はどうなるの?」

 神楽舞が話題のスマホニュースに言及した。

「それはそれでMiyazonが対応してくれるんじゃない? 事情を話せば分かるし、いたずらした方も身元がバレれば罪に問われる。当たり前に対処すればいいんだよ。仮想通貨だとか、<バリュ-スター>の仕組みがどうとか、みんな話を難しく考え過ぎてしまって、要は本質は何か、単純に考えればいいんだよ」

 飛騨亜礼の見解は単純である。
 Miyazonは世界的なネット通販企業であり、最近では<Miyazon Video>という動画サービスにも進出し、テレビ業界も震撼させている。

「法律が整備されてない新しいITサービスへの対応は、その動向を見守りながら、育成と消費者保護の観点から両面で考えていくという朝倉財務金融相のコメントもありましたし、まあ、まだ試行錯誤の中にあるということですね。ちょっとユーチューバーカエル氏に事情説明してきますね」

 <さえさえ☆>がにっこり笑って純白のスーツ姿で立ち上がった。


 
     †



「信長さま、カエルはやっぱり<AIヒューマン>だったようですね」

 <さえさえ☆>は涼しい顔でユーチューバーカエルの死体を見下ろしている。
 その横で織田信長が名刀<へし切長谷部(きりはせべ)>を構えている。
 黒色の鞘の先端に金色の装飾が施されていて、派手好きの信長らしくゴージャスである。

「そなたは某国のくの一なのかな?」

「さあ。私は大統領の指示で動いてますので」

 <さえさえ☆>は左手の手刀の血をハンカチで拭き取る。
 カエルの心臓がある部分が空洞になっている。
 完全に不意をついた一撃だったのだろうが見事である。
 白いスーツには返り血が一滴もついてなかった。

「米国には<AIヒューマン>が100万人いるそうだな」

「そうです。その中にはナノマシンを使って超常の力をもつ怪物もいます」

「それを人知れず始末するのが、そなたの役目か?」

「さあ、どうなんでしょう。ただ、日本も米国の大事な同盟国ですから」

「今回はわしの出番はなかったな」

「また、どこかでお会いできると思います。では」

 <さえさえ☆>は何事もなかったように部屋を出ていった。 
 信長も部屋をでていく。

 その後、作業服を着た清掃員ふたりが部屋に入ってきた。
 ユーチューバーカエルの宿泊記録自体が抹消されていた。




(あとがき)
YoutuberヒカルさんのVALU事件、いろんな方面に延焼中
https://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/13149626.html

YouTuberヒカル、ついに名前・住所・電話番号など全バレ! 1億円するロボットやアフリカライオンなどを代引きで送り付けられヒカルランド建設へ
http://blog.esuteru.com/archives/20017724.html

金曜ドラマ『ハロー張りネズミ』|TBSテレビ
http://www.tbs.co.jp/hello-harinezumi/

不明ゾウガメ「15分で発見」のナゾ 園長が語った「大きな声では言えないこと」
https://www.j-cast.com/2017/08/17306107.html?p=all


 今回、ちょっとストーリーが動き出したのですが、AIヒューマンとは何か?という話がちょっとづつ出てきます。

 VALUは株に似てるけど投資じゃないそうで、そこを曖昧にして金融庁と相談して(非公式ですが)はじめたサービスなので、投資の自己責任論が適用できない。

 どちらかというと、頑張る人を応援するサービスという建前になってるので、クラウドファウンディングに近く、この問題は山本一郎氏も言ってるように国税局も認識してしまって、noteやクラウドファウンディング業界全体に波及しそうです。110万円以上のお金が動くと贈与税が適用される可能性があるそうです。

 noteは直接に被害はでないでしょうが、クラウドファウンディングとか、個人の支援サービスに規制がくる可能性が出てきています。

 それとユーチューバー業界の会社の株式上場問題にも波及しそうで、ヒカル氏の会社の上場は無くなった感じです。 株式上場後、同じことをやってくる可能性もあれば、誰も株を買う人いないでしょう。

 この問題、IT業界の全体の将来にも響いてきそうです。
 みんな他人事だと思ってるけど、個人の支援サービスというもの自体の問題に発展する可能性がありますよ。
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登場人物紹介

某IT企業に勤務する《複垢調査官》飛騨亜礼(ひだあれい)。

巨大小説投稿サイトの運営スタッフの神楽舞(かぐらまい)。

巨大小説投稿サイトの二代目運営リーダー坂本マリア。

巨大小説投稿サイトのバイトリーダーメガネ君。

対怪異戦闘の専門家で道術士の風守カオル。

風守カオルの使い魔の道神、悪童丸(あくどうまる)

神沢優(かみさわゆう)


神沢勇の姉。公安警察、秘密結社<天鴉(アマガラス)>のリーダーでもある。

チャラ夫君

空気は読めないが、優秀な巨大小説投稿サイトのプログラマー。

織田めぐみ

茶人である織田有楽斎の子孫で、巨大小説投稿サイトのバイトのひとり。

ハネケ

メガネ隊の新人。<刀剣ロボットバトルパラダイス>のプレーヤー。
金髪碧眼のオランダ人ハーフ。 

夜桜

メガネ隊の新人。<刀剣ロボットバトルパラダイス>のプレーヤー。
黒髪に黒いくさび帷子を愛用。 

竜ヶ峰雪乃丞(りゅうがみねゆきのじょう)

<刀剣ロボットバトルパラダイス>などのネットゲーもリリースするマルチメディア企業IMT.com会長。


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