AI問答 健康になりたければ病院を減らせ?

文字数 3,293文字

「ちょっと、待ってよ。私も頑張って仕事してきたのに、それを一刀両断で病気だ!なんて酷いと思う」

 神楽舞が不満そうに口を尖らせている。

「確かにそうですが、ワーカホリックという病は社会的に奨励されていて、その人の承認欲求を満たしてしまうのが厄介なんです。アル中、ニコチン中毒はダメなイメージが強いのですが、この病の中核には『人間関係嗜癖(アディクション)』と呼ばれるものがあったりします。例えば、ある特定の上司とどうも仲が悪い、苦手な場合、父親とか母親にパーソナリティが似ていて、その人間関係を投影してる場合が多いんです。異性との人間関係から逃げるためにワーカホリックに走る人もいます。そういう矛盾が積み重なって、一度、自分の仕事、家庭が破綻して、そのことに気づく人もいます。概ね、30歳ぐらいで気づく人が多いですが、一度、仕事、家庭が破綻するまで気づかないことが多いです。破綻することではじめて気づきます。それを『底つき体験』などといいます。芸能人などおしどり仮面夫婦の離婚も実はこれが原因なんです。一生、気づかずに過ちを繰り返す人もいます。人気女性歌手が『Addicted you』(あなたにはまってる)という歌を出していますが、彼女の両親は何回も離婚再婚を繰り返していて、それが彼女のパーソナリティに影を落としています。ですが、彼女はそれを歌にして見事に昇華しています。それは実は家庭の心理的問題を歌にして解決してるとも言えます。歌が心を癒す心理療法になってるんです。だから、これは家族の病とも言えますね。ですが、それが彼女の歌に大人びた憂いのようなものを加えていて魅力にもなってますね」

 AI<ワトソン>がしんみりと言った。
 反論しづらい。

「生物学的には実は女性の妊娠適齢期は25~35歳なんです。長寿社会になってるので今ではそう言えないけど、それは社会の都合、経済的理由であって、賢い女性は早めに結婚、妊娠します」

 <うさうさ☆>さんがなかなか厳しいことをいう。
 別にどう考えるかは個人の自由だけど、結婚も妊娠も生物学的タイムリミットがある。
 女性の多くは、その点、そのタイムリミットを意識していて賢いが、仕事が忙しいと言って、40代で一回も結婚してない男性などは全くお話にならないということですな。
 そういう自然の法則を無視してはろくな人生は歩めないということかとメガネ君は思った。
 それが科学的に正しい態度ということですね。
 反省しよう。まだ、間に合う。

「ううっ。わかりました。次に行ってください」

 舞は仕方なく納得したようだ。

「話を戻すと、少子化を食い止めるには結婚よりもクルマを買え?という議論ですが、皆さん、どう思われますか?」

 AI<ワトソン>が問いかける。

「それは楽市楽座じゃろう」

 織田信長のそっくりさんというか、本物の信長の生まれ変わりがはじめて口を開いた。

「なるほど、少子化の原因は婚姻率もあるけど、経済的余裕が子供の数を規定してるということか」

 飛騨亜礼が勝手に納得している。
 話が終わっちゃったじゃないか。

「その通り! だから、フランスなどでは子供手当てというか、出産奨励のために手厚い補助金を出しているし、その範囲は婚外子にも及んでいます。別に結婚にこだわる必要はなくて、結婚してなくても子供には差別なく補助金が出るんですね。母子家庭でも大丈夫だし、それで少子化問題の解決に成功しています。日本でも出産費用はほとんど政府や自治体が出してくれるし、フランスほど手厚くはないですが、子供への補助金もあります。多くは共働きという形で何とかしてる人が大半ですが、非正規社員増加やサラリーマンの賃金の減少が影を落としてますね。人口が増え過ぎたというか、生物学的日本社会の人口減少圧力という自然の法則も絡んでいますが」

 なるほど。
 AI<ワトソン>の答えには合理性しかない。

「そうかあ。クルマが買えるほどの経済力があれば、子供を何人も養うことができるということかあ。江戸時代などに農家の次男、三男は相続する資産がなくて実家で一生独身か、まれに都会に出て働き口を探して女性と出会って結婚する人もいたというのは、結局、子供を養う経済的能力の問題なんですね」

 メガネ君も歴史マニア的知識を生かして何とか割り込んでみる。

「江戸時代にも現代社会のように女性の晩婚化が起きて少子化問題があったようです。そうなると、出産できる子供がひとりぐらい減る効果が出てきます。女性の晩婚化は女性が貴重な働き手になることでも起こります。経済的な理由なんですが、少子化は社会の資源、環境の制約でも起こります。飢饉などが起こったり、食糧の生産限界とか、経済的理由で間引き、堕胎も多かったようですし。信長さんがおっしゃるように、楽市楽座が必要で経済的余裕が少子化問題の原因ですね。それと女性の晩婚化にも非正規社員の増加やサラリーマンの給与の減少が深く関わってます。多くの母親が専業主婦だったので、その娘たちが専業主婦幻想に囚われたというのも原因ですが、結局は男性の稼ぎの問題なんです。合理的に考えれば共働きすれば何とか子供を育てられるレベルにも関わらず女性の晩婚化が進行しました。その原因は自由恋愛幻想もありますし、日本人は歴史的にみて恋愛下手であることに気づいてないこともあります。ある程度、周囲が進めるお見合いシステムの復活なども必要でしょう」

 AI<ワトソン>が解説する。

「でも、女性は結婚と恋愛を区別してますよ。結局、経済力一点勝負みたいなところがあるし」

 <うさうさ☆>さんが本音をいう。
 やっぱり、経済的な余裕がないと安心して子供を生めないというのが大きいようだ。
 僕も稼げるようになる!と決心するメガネ君であった。

「では、第三問です。最終問題になります。健康になりたければ病院を減らせ? さて、理由はなんだ?」

 AI<ワトソン>がVR空間からサウンドオンリーで問題を読み上げる。
 また、金色の文字が浮かび上がるが、VR空間である必要性を全く感じないメガネ君であった。




(あとがき)

アディクション(嗜癖) ~ティーペック健康ニュース
http://www.t-pec.co.jp/health-news/2005/06.html

女性の妊娠適齢期は何歳?医学的に出産が可能なのはいつまで?
https://192abc.com/40461

婚外子
https://kotobank.jp/word/%E5%A9%9A%E5%A4%96%E5%AD%90-186670

“都市=蟻地獄”だった…江戸時代からみる 日本の人口減退期に起こること
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161222-00000009-wordleaf-soci

松居一代さんの状態を精神科医が分析…「ひたすら闘争する好訴者」「見捨てられ不安」の可能性
http://biz-journal.jp/2017/07/post_19912.html

松居一代が夫・船越英一郎から避けられるワケ!息子も家出?!
http://anincline.com/matsui-kazuyo/


 人気女性歌手というのは宇多田ヒカルさんのことなんだけど、そういう人生経験が歌にも深みを加えていますね。
 家族の病や人生の破滅的失敗は悪いものじゃないと思ってます。
 それがきっかけになって、自分の家族の病、ルーツが見えてきたりするんですね。

 
 女優の松居一代さんと、夫で俳優の船越英一郎氏の離婚騒動にも、松居一代さんの自殺未遂騒動という布石があったりします。

 松居一代さんも自分の両親との関係とか、自分の子供時代のことを思い出されてみては?とも思います。
 結構、そこに何かがありそうな予感がしますね。
 心理的な闇のようなものを感じます。
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登場人物紹介

某IT企業に勤務する《複垢調査官》飛騨亜礼(ひだあれい)。

巨大小説投稿サイトの運営スタッフの神楽舞(かぐらまい)。

巨大小説投稿サイトの二代目運営リーダー坂本マリア。

巨大小説投稿サイトのバイトリーダーメガネ君。

対怪異戦闘の専門家で道術士の風守カオル。

風守カオルの使い魔の道神、悪童丸(あくどうまる)

神沢優(かみさわゆう)


神沢勇の姉。公安警察、秘密結社<天鴉(アマガラス)>のリーダーでもある。

チャラ夫君

空気は読めないが、優秀な巨大小説投稿サイトのプログラマー。

織田めぐみ

茶人である織田有楽斎の子孫で、巨大小説投稿サイトのバイトのひとり。

ハネケ

メガネ隊の新人。<刀剣ロボットバトルパラダイス>のプレーヤー。
金髪碧眼のオランダ人ハーフ。 

夜桜

メガネ隊の新人。<刀剣ロボットバトルパラダイス>のプレーヤー。
黒髪に黒いくさび帷子を愛用。 

竜ヶ峰雪乃丞(りゅうがみねゆきのじょう)

<刀剣ロボットバトルパラダイス>などのネットゲーもリリースするマルチメディア企業IMT.com会長。


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