第15話

文字数 1,130文字

 テレビの向こうの相手は更に語り続ける。

「乃夜くん……こちらの霊界はね、助けを求めているの。だから、あなたにも手伝って欲しい」

 何を? 僕はその女の子に心で答えた。

「聞いて。実はね……想像で作られた創作物に出てくる登場人物というものは、皆、霊界で実在しているのよ」

「な、そんなことがあり得る訳がない」

 僕は咄嗟に反応した。だって、アニメやゲームなんてものは全部、フィクションなはずだ。

「それがね、本当に生きている創作物は霊界が人間に指示を与えて作らせているのよ」

 ……。

「インスピレーションを人に与えて作らせているとでも? 急にそんなこと信じることはできないさ」

 まだ信じられなくていい。その女の子はそう語った。

 アニメやゲーム好きな人なんかが聞いたら発狂しそうな内容だ。

 とても、信じられない、だけど……。

「じゃあ、霊界に登場人物が本当に実在するというのは嘘ではない訳だね」

「そうよ、愛があるでしょう?」

「続けて聞くけど、その登場人物は天使だったりするのかい?」

「そう、天使があらゆる創作物に入り込んでいるのよ。乃夜くん、これは人には秘密にしておいて欲しいの」

 ……分かったよ。僕は霊界の秘密に、ただ呆れるのであった。

 それはもう霊界ではなくて天国からの干渉だな。しかし、そうだとするとこれまでのことに妙に納得をした。悪い創作物だけだと確かに、世の中が可笑しくなってしまう。だから良い作品を作ってバランサーとなっているのか。

「それで、一体何を手伝えと?」

「それは……」

 ――。

 なるほど。そういうことか。確かにそんなことをすれば世界が変わる。

 僕はこのことを自分の使命だと受け止めることにした。

「分かった。だから、このことは秘密にしておくよ。そちらも頑張ってね」

「うん……」

 ザーッ。

 そして、このいつも見ているテレビとはなぜか、コンタクトが取れなくなった。

 テレビが霊界と繋がっているのは確認が取れた。これに気づける人間が果たしてどれだけいるのだろうか。いや、いないだろう。多分、地球上で僕一人しか。

 僕はワームホールの研究をしていて分かったことがある。

 もしかしたら、テレビから地獄に落ちてしまうんじゃないか。

 霊界と繋がっているのなら、テレビを見ることで悪い世界と繋がってしまうからだ。

 僕はこれを一つの仮説として、研究を進めることにしよう。

「テレビが獣の像とはよく考えられたものだ」

 これを礼拝することで、ワームホールと繋がってしまうんだ。

 ……するとまてよ。

「じゃあ、携挙もテレビと繋がっているのか?」

 楽園に行く方法がテレビ? しかし一体どうやって? このワームホールを探す方法はどうすれば?

 これから僕はテレビの指示に従っていこう。そう思った。
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