3. 物騒な小男
文字数 2,903文字
見習い兵士のアベルや、軍医見習いのリマールもまた、その城の中に眠る部屋を与えられて暮らしていた。ただし、アベルは自分と同じような
そして、満月に薄雲がかかる夜のこと。
市壁沿いにも、道を照らしている
この時間の当番は特に退屈なのに、特に油断禁物で、ずっと気を張っていなくちゃいけない。見習いや新米の二人は
今、街灯が照らした人影に。
その人は、フェルドーランの森に続いている木立の中から、突然ひょっこり出て来た感じだった。実際はそうでもないかもしれないが、遠目には、少し腰の曲がった老人といった雰囲気の
老人か、酒に酔ってるかのどちらかだろう。もしくは両方。そう思いながら、若い少年兵士たちは様子を見ていた。
そのフードを
門番の二人はすっと動いて、その男の前に立ちはだかる。そして、事務的に決められた質問をしようとした。
すると。
「待って・・・。」と、男の方が言ってきた。
不意をつかれて、二人の少年兵士は思わず待った。
その男からは、すぐには、言葉は出てこなかった。少ししてから、聞き取り
「私は・・・あなた方の質問に・・・正直に答えることが・・・できない。」
男も一歩身を引いた。手を伸ばしたヴォルトから
「すると、あなた方は・・・私を・・・調べる。そして上の者を呼び・・・多くの者が・・・私のことを知ることになる。」
それでヴォルトは、「・・・そうですね。」と、返した。
「それはならない・・・私は・・・
アベルとヴォルトは顔を見合う。そして思った。酔っぱらいって、こんなふうにしゃべるものだったか。もっと陽気になって、あること無いことをぺらぺら口走るものだと思っていた。でも、泣く人もいるし、人生を語る人もいる。考えてみれば様々だ。
「若い兵士さんたち。どうか・・・私を・・・密かに・・・アレンディル・・・王のもとへ・・・連れていってはもらえないか。」
この人、いよいよ
「そのわけは・・・。」
「私の報告を・・・王が・・・聞いたと知られないために・・・密かに・・・王に会わねばなりません。私は・・・王と、そして・・・この国を救える・・・重大な情報を持っている。これを伝えなければ・・・ウィンダー・・・王国は・・・何の手を打つ間もなく・・・
「いったい、何を・・・あの、あなたは何者なんです。」
「私にあまり・・・話させないで。すでに・・・今・・・この場で口にすべきではないことを・・・少し・・・しゃべってしまった。これ以上は・・・説明・・・できない。どうか、信じて。」
「そうはいきません。王都の門をくぐろうとする者を調べるのが、わたしたちの義務。あなたのような
「王は私をよくご存知だ!」
男はとうとう、気力の全てを振り絞ったような声を放った。そして、うっ・・・と
その場は数秒、シン・・・となった。
にわかに、不安が胸をしめつけ始めた。二人とも、彼をただの酔っぱらいで片づけてはいけないような気がしてきた・・・。
「私がここへ来たことを・・・彼らに・・・知られてはならない・・・
男のさっきの声に驚いたアベルの心臓は、今もずっとドキドキしている。彼の具合が悪そうなのは、酔っているせいだ。それで、少しおかしくなってて、めちゃくちゃなことを・・・と、思いたかった。でも・・・きけば、会話が成り立つ答えが返ってくる。謎めいてはいても、受け答えはおかしくない。
アベルは、下から
フードの
この人の顔も声も、やっぱり酔ってなんかない・・・!
一方、ヴォルトは恐る恐る話を続ける。
「彼らと・・・いうのは?」
と、その時。
男はまた
「待って、ヴォルト・・・この人・・・。」
アベルは男の体を支え、彼の
すると、右の横腹あたりに、赤黒いシミが見えた。
そこから、矢羽が生えている・・・!
「