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文字数 630文字

 どれくらい時間が経っただろう。

 気が付くと、隣に誰か立っていた。
「……まったく、なんて酷いことをしてくれるのかしら」
 頭から血を流したまどかさんが目の前にいた。
「ひっ……」
 私は後ずさった。
「ちゃんと最後まで話を聞かないから、あんな目にあうのよ。このお守りはね、自分の命に対応してるの。だから、人のお守りを持って出ても意味がないわ」
「それじゃあ、はじめから……」
「そうね。あなたたちは、ここから出ることはできなかったってことになるのかしら?」
「どうして教えてくれなかったんですか?! 教えてくれていたら、やよいちゃんはあんな目に――」
「ちゃんとお守りに書いてあるじゃない」
「お守りに……?」
「それなのに、それを捨ててしまった人に言われたくないわね」
「そんな……」
「そうそう。お守りは真っ赤に濡れていたという話だったわよね?」
「それはもしかしたら、あなたたちの血で濡れていたのかも知れないわね」
 まどかさんは、私の耳元で囁くようにそう言い残し、扉を開いた。

 その先には、真っ赤な色に染まった手が見えた。

 その手から、まどかさんはお守り抜き取った。
「それじゃあ、ごゆっくり」
「待っ……」
 扉は閉じられた。

 私は絶望的な気分になりならが、このままこの館に居続けるか、命を賭してでも扉の外に出るか、選ばなければならなかった。

 もっとも、まどかさんの言うことが正しいのなら、私の運命はもうとっくに決まっていたのかも知れない。

                  (了) 

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登場人物紹介

【宮本素子(みやもともとこ)】16歳
責任感が強く、面倒見がいい少女

【月宮(つきみや)やよい】14歳
気が弱くて、守ってあげたくなるような女の子

【霧崎(きりさき)まどか】17歳
理知的な雰囲気の少女

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