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文字数 369文字

 振り返ると、まどかさんがゆっくりと倒れるのが見えた。

 その後ろに、やよいちゃんが立っていた。
 
 その両手には、仏像を抱えられている。

 やよいちゃんの瞳は狂気の色に彩られていた。
「ああ、もうこの人うるさいんですよ。こんなところ、もうさっさと出ましょう」
 やよいちゃんはそういって、地面に横たわるまどかさんの手からお守りを奪い取った。

 ドアの前でたたずむ私の横をやよいちゃんは通り抜けた。
「素子さん、あなたのことは好きでした。でも、一人しか助からないんじゃ仕方ないですよね?」
「それじゃあ、お先に失礼しますね」
 そういって、やよいちゃんは部屋を出て行った。

 やよいちゃんによって開かれた扉は、ゆっくりと閉じられてゆく。

 それからすぐに、隣の部屋から、悲鳴が聞こえた。
「きゃああああああああああああああああ」
 私はその場に茫然と座り込んだ。 
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登場人物紹介

【宮本素子(みやもともとこ)】16歳
責任感が強く、面倒見がいい少女

【月宮(つきみや)やよい】14歳
気が弱くて、守ってあげたくなるような女の子

【霧崎(きりさき)まどか】17歳
理知的な雰囲気の少女

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