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文字数 767文字

 やよいちゃんの言うように、立て札は仏像の前にあった。


 たくさんの仏像の前にあるそれは、いわくありげで奇妙な存在感があった。

 何か重要なことが書かれてあるんじゃないかという気がした。


 そこには梵字のような文字で何か書いてあった。

 それを見て、私はハッとした。

 

 ――あのお守りにある字だ。

「……なんて書いてあるのかしら?」
 私は誰に聞くでもなく、独り言のように言った。
「ぷっ……うふふふっふふふっ」
 突然の笑い声に、私はびくりと反応した。

 まどかさんだった。

 それは、どことなく聞くものに不安を与える笑い方だった。
「……まどかさん?」
「ああ、ごめんなさい」
「どうかしたんですか?」
「別に、なんでもないわ」
 まどかさんは、そう言いながらも、口元は尚も笑っている。
「もしかして……読めたんじゃないですか?」
「え?」
「そこに何て書いてあるのか、読めたんですよね?」
「そうね」
「え?」
「なんて書いてあるか教えて下さい」
「ちょ、ちょっと、やよいちゃん、落ち着いて」
「……」
「それにまどかさんも。ここに書かれている文字が読めるって本当ですか?」
「ええ、本当よ。でも、読まない方があなたたちのためかも」
「それはどういう意味ですか?」
「言葉通りの意味だけど、まあそうよね。読み上げてあげましょうか?」
 まどかさんは、読むと私たちのためにならないと言っているけど、情報は一つでも多い方がいい。
「お願いします」
「この先が出口って書いてあるわ」
「え、本当ですか?」
 まどかさんの言うように、立て札の向こうには扉がある。
 
 その扉が出口に通じてるんだろうか?

「でも、お守りを持っていないものが立ち入ると死ぬって書いてあるわ」

 え? ……今何て?

 それに……

「……お守り?」

「たぶん、これのことじゃないかしら?」
 そう言って、まどかさんは自分のお守りを掲げた。
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登場人物紹介

【宮本素子(みやもともとこ)】16歳
責任感が強く、面倒見がいい少女

【月宮(つきみや)やよい】14歳
気が弱くて、守ってあげたくなるような女の子

【霧崎(きりさき)まどか】17歳
理知的な雰囲気の少女

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