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文字数 419文字

 その扉を開けた瞬間、たくさんの目を意識して、硬直した。

「ひっ」
 やよいちゃんは小さな悲鳴をもらした。
「怖がる必要はないわ。単なる仏像よ」

 まどかさんだけが平然と言った。でも、まどかさんの言うように、無数の目の正体は仏像だった。


 もっとも、100体くらいはある。


 正体が分かっても、異様な光景であることに変わりがない。

「ここって、どういう建物なんですかね?」

 私は今まで通ってきた三つの部屋のことを思い浮かべていた。

 

 どれも異質で、私の知っているような普通の建物のように思えなかったのだ。

「仏像を集める趣味を持った人が立てた建物とか。あるいは、博物館か何かで、展示物を保管しておく部屋とか」
「保管室ですか。なるほど」

 と、私は言ったが、ぜんぜん納得していなかった。


 博物館の人が私たちを攫うとは思えなかったし、なんと言えばいいだろう、もっとうす気味悪い場所に思えたからだ。

「あの……そ、そこに立て札があります」
 とやよいちゃんが言った。
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登場人物紹介

【宮本素子(みやもともとこ)】16歳
責任感が強く、面倒見がいい少女

【月宮(つきみや)やよい】14歳
気が弱くて、守ってあげたくなるような女の子

【霧崎(きりさき)まどか】17歳
理知的な雰囲気の少女

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