学に報告⑧

文字数 1,565文字

千葉の総合病院の中の婦人科の待合室で、母さんと二人で呼ばれるのを待ってると周りの視線が痛い、なんで此処にいるの的な眼差しで俺を見ているからだ。   
それもその筈、場違いな容姿で俺は居るからで、正にどこから見てもメンズだからで、母さんは、その様子を気遣って、わざと大きな声で付き添いありがとうねっと言う。 
母さんのお陰で痛い視線から解放されると漸く、苗字のみで呼ばれる、先生も気遣ってくれて非常に有り難かった。
ノックすると母さんと診察室に入る。
「真鍋進君ね。森先生から聞いてるわ。初めまして、婦人科の三戸部弥生(みとべやよい)です。先ずは、そこのベッドに横になってね。エコーで子宮の中確認するからね」 
そう言うと女性の先生は俺のお腹をめくると何か細い長い管のような物を俺のお腹に当てた。
テレビモニターのような機械の画面に俺のお腹の中(子宮)が映し出される、なんか、動いているのがわかる。
「おめでとう!二週目ね!今が大事な時期だから安静にしないといけないわ。即、入院した方が良いわね、真鍋君の場合は、男性の性器が邪魔してるから、私はそのところは申し訳ないけど専門外なのであとは主治医の森先生に報告してあげるから入院先は此処の病棟じゃないから安心してね。森先生が来るまで、待合室で待っててね。お大事に」
そう言うと車椅子を準備してくれたが、俺は周囲の視線が嫌で断るが母さんが気を遣って人が居ないときに座れば大丈夫、いざとなれば私が座るからと言うので、躊躇したものの借りる事にした。
生憎、人がいて車椅子には座りずらく代わりに母さんが座る。
俺はゆっくり歩いてなるべく近い席に腰かける事にした。
「真鍋さん!お待たせしました。」 
振り返ると森先生がそこにいた、手には何かを持っている、ニット帽とスカートだ、それを俺に手渡すと後ろ向きになって俺を隠しているようで
「今のうちにそのスカート履いて帽子を被ると良いよ!済んだら声かけてね」 
凄く有り難かった早速履いて帽子も被ると母さんが車椅子から降りて俺は周囲を気にせず車椅子に座ることができた。
「先生、もう大丈夫です。ありがとうございます。お陰で助かりました」
「もしかしたらと思って持ってきて良かったよ!妻のを借りてきた。返すのはいつでも構わないからね。さあ、行こうか、私について来てね。」  
「先生、電話したいんですが、良いですか?知らせたい人がいるので」 
「構わないよ。もしかして?彼氏君かな?お腹の父親でしょ?」 
「はい、そうです。真っ先に知らせたくて」 
「漸く、進の好きな人わかるのね♪楽しみだわ♪」
「ほんとは知られたくないけど、嫌な予感するから」 
「嫌な予感って何よ?」 
「そのままだよ!母さん(苦笑)」 
「はい、スマホ」 
母さんは、俺の代わりに俺のバッグからスマホを取り出すと俺に手渡す。
スマホを受け取ると学に電話する。
「もしもしたちばなです」学の声が耳元で聴こえる
「もしもしまなぶ?今、病院なんだけどやっぱり妊娠してたよ♪真っ先に知らせたくて、うん!ダンスは辞めようと思う。だけど学は俺の分まで夢を追いかけてよ!当分、入院するから会えないけどちゃんと女として生まれ変わって学の子と一緒に無事に退院するから待っててね♪うん♪俺も愛してるよ♪」
「まさか?あの橘学くん?なの?ダンススクールでめちゃイケメンの」
「だから知られたくなかったんだけど」 
いつの間にかバイバイして電話を済ませていた俺は、母さんの言葉に反応した。 
「きゃー彼なら間違いなく男性アイドルになれるわよ!母さんが義母として応募してあげようかしら?」
「母さん!いい加減にしろ!学は違う夢を追いかけてるから無理だよ!だから嫌だったんだよ!嫌な予感的中だね(苦笑)」
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