第11話(3)援軍対神器

文字数 1,809文字

「ぐう……」

「さて……」

「む……」

「これで終わりにして差し上げましょう……⁉」

「うおおっ!」

 ムツキが手を掲げたその瞬間、ヤヨイが斬りかかってきた。

「おっと!」

「ちっ!」

 ヤヨイの振り下ろした剣をムツキがかわす。

「ヤ、ヤヨイ……」

「カンナ、ムツキのおっさんが首謀者ってことかい?」

「え、ええ……」

「そうか、分かった……」

「お、おっさんって……だから貴女たちとはそんなに年齢は離れていませんよ……」

「黙れ!」

「むっ……」

 ヤヨイが剣を振るうが、ムツキはまたもかわす。

「すばしっこいな……」

「貴女の動きが鈍いのでは? 見たところその左腕……」

「ふん!」

「はっ!」

「なにっ⁉」

 ムツキがどこからか発生させた剣を取って、ヤヨイの剣を防ぐ。

「ふむ……」

「アタシの剣を防ぐ……ここまでの使い手だったとは予想外だ」

「……これくらいで予想外と言われても困りますね」

「なんだと?」

「むん!」

 ムツキがヤヨイの剣を弾く。

「しまっ……」

「はあっ!」

「!」

 ムツキの振るった剣を食らい、ヤヨイの大きな体が凍り付く。

「左腕さえ折れていなければ、もう少し分からなかったかもしれませんね……」

 ムツキが剣を鞘に納め、腰に提げる。カンナが驚く。

「こ、氷の剣? ヤ、ヤヨイ……!」

「ご心配なく。ちょっとうるさいから凍らせただけです。命に別条はありません」

「い、生きている……?」

「ええ、ただ、これを砕いたりすれば……」

 ムツキが鞘に手をかける。カンナが声を上げる。

「! やめて!」

「……させん!」

「おおっと!」

 キサラギが苦無で斬りかかるが、ムツキが剣を抜いてそれを防ぎ、その場から後退する。

「キサラギ!」

「申し訳ございません、遅くなりました……」

「忠実なる忍者のご登場ですか……」

「貴様がクーデターの首謀者だったとはな……」

「ええ……」

「まんまと欺かれたぞ……」

「ふふっ、なにも知らずに連絡係を務めて下さってありがとうございます。おかげで姫の情報はこちらに筒抜けでしたよ」

「……借りはキッチリと返してもらう!」

「むっ!」

「はああっ!」

「おおっ⁉」

 キサラギがあっという間に間合いを詰め、ムツキに斬りかかる。ムツキはこれも防ぐ。

「はっ、はっ、はっ!」

「よっ、ほっ、とっ!」

 キサラギが素早い連続攻撃を仕掛けるが、ムツキはなんとかこれも凌ぐ。

「……ここまでやるとは」

「貴方ももうボロボロのわりにはなかなか動けますね……目を見張るスピードだ」

「ふん、もっと上がるぞ……」

「え?」

「止められるものなら止めてみろ!」

 キサラギが後ろに数歩下がってから飛びかかる。

「うおっ⁉ ならばこれです!」

「‼」

 ムツキがどこからか取り出した鏡から雷が発せられ、キサラギの体を貫く。キサラギはうつ伏せに倒れ込む。ムツキが額の汗を拭う。

「ふう……なかなか焦りましたよ」

「こ、今度は鏡……キサラギ!」

「急所は外しました……というか、とっさにかわしましたね、大したものです」

 ムツキが感嘆とする。カンナがほっとする。

「よ、良かった……」

「やはり厄介な存在です……ここでとどめを刺しておきますか……」

 ムツキが鏡をしまい、再び鞘に手をかける。カンナが叫ぶ。

「や、やめなさい!」

「うおおっ!」

「うおおっと!」

 シモツキが突き出した槍をムツキは横っ飛びしてかわす。

「シモツキ!」

「カンナ様! たいへん遅くなりました! 申し訳ございません!」

「……」

「どうした! 驚きのあまり声も出ないか⁉」

 シモツキがムツキに向かって声を上げる。

「ええ、貴方がここまでたどり着くのは予想外でした」

「な、なんだと⁉」

「かなり戸惑っています……」

「ば、馬鹿にするな!」

「いえ、むしろ感心しているのです」

「どっちでも良い! 喰らえ!」

「むう!」

「そらっ! それっ!」

「む! ぬ!」

 シモツキの繰り出す鋭い突きをムツキはかろうじてだが、かわしてみせる。

「ぐうう……」

「距離を取りますか……」

 ムツキが言葉通り、シモツキから離れる。シモツキは笑みを浮かべる。

「それは悪手だぞ! それっ!」

「はっ!」

「⁉」

 ムツキが取り出した勾玉を握りしめると、強風が巻き起こり、シモツキは自ら投じた槍ごと吹き飛ばされて、壁に叩きつけられる。ムツキが淡々と呟く。

「剣、鏡、そして勾玉……神器の力のお陰ですね……」

「神様に感謝を述べるのはまだ早いですよ……」

「! ちい……」

 ムツキが舌打ちする。カンナが立ち上がってきたからである。
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