『添い遂げる』

文字数 333文字

去年の冬、彼と一緒に作った雪だるまを思い出した。

そんなに積もらなかったから、それぞれ小さな雪だるまを作ってベランダに並べて飾った。並んだ雪だるまもどことなく幸せそうで、私たちみたいって笑った。
数日経って、やっぱり力の差かな、彼の雪だるまはまだ形がわかるのに、私の雪だるまはもうほとんど融けていた。なんだかさみしかったけど、彼が「ちゃんと添い遂げてくれたんだな、ありがとう」ってあまりに雪だるまをほめるから、あったかかった。私の子もきっと最期まで安心して居られたんだろうなって思って、心からお礼を言った。

彼も、そうだったかな。
私、ちゃんと添い遂げられてたかな。

「ありがとう」が最期の、どうしようもない幸せを終えて。もうちょっとだけ記憶で生きていこうって、すこし思った。
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