『誰といても、一人だった。』

文字数 356文字

誰といても、一人だった。
人が無駄に多い教室の、クラスメイトとやらと過ごしていても、心の要塞は崩れなかった。
当たり前だ。元より二人が、隣にいる誰かと楽しそうに話す姿が、似合わない人間だから。一人の温度にもう慣れてしまったし、今さらこれ以上望もうとは思わない。思えないのだ…でも、

寒い日だった。外気は冷たくて痛くて、こんな日に係を任せた先生を恨みながら作業をしていた。
そろそろ仕事が終わりそうで安心していたとき、先に終えたもう1人の係が、私に熱を差し出した。自販機で売っている、缶のホットココア。
「寒そうだから、これ…よかったら」
知ってる。これはよくある気遣いだ。いくら意外な人からだって、いくら優しさが本物みたいだって、これに特別な意味はない。私はずっと、一人のはず、なのに、

なぜか、あのあたたかさを、覚えている。
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