第4話
文字数 1,484文字
図らずともぼやきも漏れる。なにせ、海外転勤した両親の顔を思い出そうとしても、モヤがかかったようにうまくいかない。音枝レンリは真実を告白しているのだと、馬鹿正直に信じる他なかった。
アイツ、半不登校だよ。去年は多少マシだったが、今はこの有様だよ。出席日数と試験の点数はどうにかしてるらしいが、こんな朝っぱらから出てくることの方が少ないな。そんなことがあったら雪でも降るんじゃねぇかな。
それに比べて、未散は朝早ぇんだ。もう朝飯食い終わってジョギングしてるよ
ユウも席に着いて、手を合わせる。
小さく頭を下げて食べ始めると、ダイキが話しかけてきた。
どうもこうもないのが実際といったところだ。
信じられない話だが、さりとて音枝レンリが巧妙に嘘をついているとは思えない。かといって素直に信じられるかといえば、あまりにも現実離れしている。どっちつかずのまま、宙ぶらりんで朝を迎えたというのが現在の心境だった。
そうだよなぁ……信じるにしたって、自分が死んだ気ぃしてるかっつったら、そんなことねぇし……というか死んでる気分ってなんだかなぁ……。
それに、「この学園都市の外はありません」ってよ。そっちの方が信じられないかもな。チハツの奴は「渋谷も新大久保も行けないの⁉」って半狂乱だったし。昨日はなだめるのに苦労したわ
とはいえ、新瀬は学園都市だ。衣食住が困らないレベルで賄える。学園都市の外がないのなら、それらがどこから補填されてくるのか疑問が湧いたが、考えても詮なきことだろう。
とにかく、目下立ち塞がっている危機は、あの死神現象だった。
あ? ただの寮生仲間だよ。
危なっかしくて見てらんねぇから、俺が勝手に世話焼いてるだけだ。変な誤解すんな。
ただまあ、千初を見かねて【ココロのウタ】ってのは手に入れるかもな……あとは自分の身を守るためにも
揃って夜に外出していたとあって、よもや恋人関係かと思われたが、実際はそう甘い関係性ではないらしい。
丁度よく静寂が漂ったところを見計らったかのように、バタバタという慌ただしい足音が沈黙を破った。
チハツが洗面所と自室を行き来する喧噪をBGMに、ユウはもくもくと朝食を食べ進め、チハツが食堂に着席する頃には最後の一口も食べ切った。