第1話
文字数 1,675文字
――担任教師が非実在系バーチャルシンガーの少女だった場合、
どうすればいいのだろうか?
音枝レンリ――名前と概要ならば覚えがあった。流行りのボーカルソフトウェアのキャラクター、いわゆるバーチャルシンガーだ。
プロアマ問わず音楽制作に用いられているうえに、3DCGによるライブも開催されており、今やその人気は流行に敏感な若者のみならず、全世界に轟いているというのだから驚きだ。
……などということを思い浮かべている場合ではなく。
コスプレをしているとも考えられたが、そもそも担任がコスプレをするだろうか……というのは偏見かもしれないが、転校生だとしても輪にかけてギクシャクとしたやり取りをしてしまった。これからお世話になる相手なのだ。なるだけコミュニケーションは円滑に運んでおきたい。
……先に入室して転校生の旨を説明する音枝レンリの横顔を見つめながら、一人思案に耽る。
そういうたぐいのドッキリかとも疑ったが、教室内の生徒達が向ける視線は大人の女性に然るべきもので、嘲笑や苦笑は一切見受けられない。どうやら音枝レンリであることは正真正銘の現実らしかった。あるいは、そんなけったいな幻覚を見ているのが自分だけか。
あと、これは繰り返しになりますが、生徒は十八時以降、校舎に残ることは禁止されています。
先日、耐震強度の確認をしたところ、ガス管の問題が発覚しました。
普段生活する分には問題ありませんが、専門の業者による検査が入るので、放課後に部活動が終わり次第、速やかに下校するようにしてください