第9話
文字数 1,730文字
数日後、リオンは何事もなく回復し、学校へと復帰することになった。
音枝レンリによって欠席は風邪のためだと通してあり、特にお咎めもなかった。それこそ授業に抜けが生じてしまっただけで、犬に噛まれたようなものだとリオン自身も納得したようだった。
こればかりはシュンと肩を落とす音枝レンリだった。
料理はまだ修行中の身とのことで、朝食はトーストとゆで卵、ドレッシングで和えるだけのベビーリーフとサラダチキンのサラダ、インスタントのクラムチャウダーが食卓に並べられた。
異を唱えるミチルにはしかし、ダイキは加勢しなかった。
短い間柄ながらも珍しいと思える組み合わせに、ミチルは肩を竦める。
二人も頑ななわけではない。リオンの助け舟にはすんなり従い、ミチルも心を解きほぐしたらしかった。
しかし……だからこそ、疑問に思ってしまうこともある。
あの強敵・ホワイトとの戦いの最中に、リオンはそう口にしていた。
死が辛く苦しくて孤独であることは、ユウも理解できる。だがあくまで、それは死という事物の切り口の一側面でしかない。
土壇場でそう言い放ったということは、普段からそのように考えているということなのではないだろうか……?
嘘も方便の内だと、ユウは話をそこで切り上げた。直感的に、とてもセンシティブな内容だと思ったからだ。
もしかすると、リオンが自身の過去について思い出すキッカケを封じてしまったのかもしれない。だとしても、今それを引き出すことが正しいとは思えなかった。
でも、どうやって? ……というのが、ユウの本音だった。
正直に言えば、音枝レンリに関してはまるで素人だ。そのため、なにをすれば理解が深まるのかも、まるで想像がつかなかった。