第3話
文字数 3,750文字
ヨウコはたまに僕に話しかけ僕はそれにたまににゃ~と答える。そのうちなんだか本当に友達になった気がしてきて、気持ちは朗らでその長い距離もあまり苦でなかった。いつの間にか道は細くなり、いくつか右に左に道を曲がっていってその奥まった一角に彼女の家があった。
立派な門構えに頑丈そうな鉄門があって、その向こう側に幅広の玄関ポーチが待っていて、その二つの柱の一方に十分に明るい電灯が灯っていた。彼女は鉄門を開くとと僕を招き入れてくれて、それから玄関の鍵を開けて扉を開いた。
そのまましばらく待っていると、再びヨウコが戻ってきたみたいだ。すりガラスの向こうでモゾモゾしている。しばらくすると再び引き戸が開けられて、裸になったヨウコが入ってきた。
調度よき温度のお湯が頭にかけられて全身に流れ落ちていく。こんなに気持ちのいいものがあるのか!とフワッと宙に浮いたような気持ちでいると、ヨウコの柔らかい指が僕の体毛をかき分けて体を掻くように洗い始めた。これはじつに気持ちが良かった。体を洗われるのははじめての経験だけど、これはもしかして夢なのか?と思えるほどの心地よさだ。すこし人間の飼い猫になっている猫らの気持ちが分かる気がした。
さらにヨウコは僕に石鹸をつけて、頭からしっぽまでまんべんなく洗ってくれた。僕はそれを為すがまま受け入れた。それは優しくマッサージしてくれるようで、一分後にはほとんど寝てしまうほどリラックスしてきた。人間の風呂と言うものがこんな天国みたいなものとは知らなかった。
するとそこで突然冷水が浴びせられて、僕の天国の夢は一瞬で醒まされた。体がきゅっと引き締まりしっぽがキュイーンと天井を向いた。慣れるとしだいに冷たさが気持ちよくなってきた。初めて人間に洗ってもらったけど悪くないものだな。いやヨウコが優しいからかな。そして猫の扱いも悪くない。
初めて裸の人間をみたけど、ほぼ全身が皮膚むき出しで体毛が殆ど無い。頭の毛の髪の毛はわかっていたが、腰の下、足の付け根の間にも体毛が付いている。人間にとっても大事なところだからかな?ヨウコは若い人間だからか、皮膚は艷やかな光沢がのっていて腰からした延びるへスラっとした足の線が美しかった。右手でシャワーヘッドでつかみお湯をかけながら左手を使って洗いながら全身を洗っている。二足歩行だとこういうことが出来るのか。なるほど!っと思いながら見ていると、洗い終えた彼女はシャワーヘッドを壁の取り付け部分に引っ掛けると、再び僕の体をサッと持ち上げて脱衣場に上がった。そして僕の濡れた体をタオルで丁寧に拭いてくれた。なんだか幸せな気持ちがしてきた。これが種を越えた愛情というものなのか?そんな言葉が自然と僕の頭の中に湧いてきてなんだかジワッと体の芯も暖かくなっていたら、素早く着替えを終えた彼女は僕を抱えて上げて、
「にゃ〜」
すると彼女が僕の頭に手を回して撫でてきた。