第7話 制限時間は18分!

文字数 1,461文字

古代のエジプトやイスラエルでは、大麦は1年の最初の収穫物で、過越の祭りの時期に当たるんだね!
過越の祭りの後の最初の安息日の翌日に、初穂(はつほ)の祭りをお祝いする、とレビ記に書いてあるよ。


古代イスラエルの人々は、大麦の収穫を感謝して、神さまに初穂をおささげしたんだね!

前年に収穫した麦を貯蔵していて、過越の祭りで「5種の穀物」のどれでも使えた可能性はあるけど、今日は大麦を使ったパンを作りましょ!
三人の少女たちは、時々おしゃべりをはさみながら、レシピ動画を2回繰り返して見た。
よーし、手順は覚えたわね!


調理開始したら、レシピを見てるひまは無いわよ。

心配だったらもう1回見とく?

えー、いつもどおり、レシピを見ながら作りましょうよ?
だめだめ、18分以内に作り終えないといけないのよ!

もたもたしてたら間に合わないわ。

パン作りに制限時間があるんですか!?
そうなの、麦の粉と水を混ぜてから、生地が完全に焼き上がるまでの最大許容時間が18分

ユダヤの人々は、そんな厳格なルールに従って「種なしパン」を作っているんですね。
空気中には酵母が含まれているから、麦の粉を18分以上湿らせておくと、自然発酵が始まるらしいわ。


それで、18分以内に作るという伝統が生まれたそうよ。

へー、エジプトやイスラエルは暑いからかな……?
でも、18分という決まりは、正確な時計がある現代のことですよね。


古代イスラエルの人々が、18分以内にパンを作って焼いていたわけじゃないと思います。

エジプトから逃げるために、パンをできるだけ早く作る必要があったのは、聖書にも書いてあるでしょ?


だから、18分以内に作ろうとするのは悪い目標ではないと思うわ。
歴史の追体験ですね!!
三人の少女たちは石けんで手をよく洗い、アルコールで手指を消毒した後、調理台に向かった。

過越の祭りのための酵母を入れない大麦パン


材料(3枚分)


大麦粉 1 1/2カップ(1.5カップ)(石臼で挽いたもの)

(常温) 1/2カップ

オリーブオイル 大さじ1

今日の材料は、福井県産六条大麦の石臼挽き極細全粒粉よ。
おお!? この大麦粉、白くてさらさらしてますね!

全粒粉ってふつう、もっと茶色っぽくてざらざらですけど。

そうよね、この大麦は「ファイバースノウ」という品種なの。


寒さや雪に強くて、倒れにくく、白度が高いのが特徴らしいわ。

(大麦粉ってあるんだ……)


(大麦と言えば、麦茶か麦ごはんしか見たことない)

古都華が、大きめのフライパンにオリーブオイルを塗り、中火で予熱し始める。


翠は、大麦粉1.5カップを大きなステンレスボウルに入れた。

安祈世が水1/2カップを手に持ち、傍らに立つ。

古都華先輩、準備オッケーです!


(どきどき……)

(いざ、酵母を入れないパン作りRTA!!)

古都華はうなずいて、スマートフォンのタイマーを18分にセットした。

3,2,1 Go!!!

合図を聞くやいなや、安祈世はボウルの中の大麦粉に水をゆっくりと加える。

翠は菜箸を使って、大麦粉と水をかき混ぜ始めた。

う、硬い! 混ざらない!?
ミドリちゃん、手で!

手でいっちゃえ!!

翠は菜箸を置き、思いきって、手で生地を混ぜ合わせた。

まだ粘り気がなく、生地がぼろぼろとくずれる。

アキヨさん、オリーブオイルを忘れてるわ!
あー!
安祈世はあわててオリーブオイルを大さじ1杯、大麦粉に加えた。
あ、なんかまとまってきたかも……?
オリーブオイルを手早く混ぜこむと、粉気がなくなり、なめらかな手触りに変わる。


2、3分こねているうちに、生地がきれいな固さのボールになった。

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登場人物紹介

星山 翠(ほしやま みどり)


高校1年生。ミルトス高校に編入。

森野 安祈世(もりの あきよ)


ミルトス高校1年生。家庭科部。学生寮に住んでいる。

母は牧師。

翠とは幼なじみ。

高墨 古都華(たかすみ ことか)


ミルトス高校2年生。家庭科部の部長。

帰国生。

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