第6話 エジプト脱出時のパンは?
文字数 1,599文字
過越の祭りのパンに使われる「5種の穀物」は、小麦、大麦、スペルト小麦、ライ麦、オーツ麦。
最新の研究では、スペルト小麦ではなく、エンマー小麦またはアインコーン小麦が望ましいとされる。
「5種の穀物」のうち、古代イスラエルの人々がエジプトを脱出したときに使っていたのは、どの麦だったのかな?
うーん、どの麦なんだろ……?出エジプト記になにかヒントがあるかも。
安祈世は聖書アプリを開き、指先を動かして、素早くページをめくり始めた。
ファラオは人を遣わし、モーセとアロンを呼び寄せて言った。
「今度ばかりはわたしが間違っていた。正しいのは主であり、悪いのはわたしとわたしの民である。 主に祈願してくれ。恐ろしい雷と雹はもうたくさんだ。あなたたちを去らせよう。これ以上ここにとどまることはない。」 モーセは言った。「町を出たら、早速両手を広げて主に祈りましょう。雷はやみ、雹はもう降らないでしょう。あなたはこうして、大地が主のものであることを知るでしょう。 しかし、あなたもあなたの家臣も、まだ主なる神を畏れるに至っていないことを、わたしは知っています。」
亜麻と大麦は壊滅した。大麦はちょうど穂の出る時期で、亜麻はつぼみの開く時期であったからである。 小麦と裸麦は壊滅を免れた。穂の出る時期が遅いからである。
(出エジプト記 9章27節-32節)
神はモーセを遣わして、イスラエルの人々を奴隷から解放することを要求したけれど、エジプトの王ファラオはその要求を拒否したのよ。
神さまは疫病や自然災害を起こして、奴隷解放を要求するんだけど、ファラオは拒否し続けるの。
その「10の災い」のうち、7番目が雷と雹(ひょう)。
エジプト全土で亜麻と大麦が壊滅!?それ、イスラエルの人々も困るんじゃ……。
「イスラエルの人々の住むゴシェンの地域には雹は降らなかった」と書いてあるよ。
ゴシェンの地は、創世記のヤコブの時代からエジプト脱出の時まで、イスラエルの人々の居住地だったの。
エジプトを脱出した時期と、大麦の収穫の時期が重なるから、過越のパンに使われたのは大麦だった可能性があるわね!
一般的な小麦は、秋に種をまき、翌年の初夏に収穫するの。
大麦の収穫は、小麦より約1ヶ月早いそうよ。
古代イスラエルの人々がエジプトから逃げ出したのって、何月頃の出来事なんですか?
出エジプト記には「アビブの月」と書いてあるよ。
アビブの月は、ええと、キリスト教だと受難節にあたるから……
わたしたちのカレンダーでは、3月から4月に当たるわ。
ユダヤ暦では、アビブの月は「ニサンの月」とも呼ばれていて、1年の始まりの月なのよ。
へー、ユダヤの人々のカレンダーでは、大麦の収穫から1年が始まるんですね!
カライ派のユダヤ教徒たちは、今でも大麦だけを使って過越の祭りのパンを作るそうよ。
古都華の目に、再びいたずらっぽさが輝きはじめた。自分のタブレットを手に取り、1枚の写真を開いて見せる。
ほら見て!!
古代エジプトで作られた、本物のunleavened bread!!
ヤシの葉で編まれた丸皿の上に置かれた酵母を入れないパン
紀元前16世紀頃〜紀元前11世紀頃
出土:テーベ、エジプト(新王国時代)
所蔵:大英博物館 ※
え、これ、本当に古代イスラエルの人々が作ったものなんですか!?
せっかく作ったパンを置いていくなんて、急いで逃げすぎ……
誰が何のために作ったものかは断定できないけれど、過越しの祭りのパンの原型と言えるわね!
聖書に記された出来事が、本当に起こったことなんだって思えますね!
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