第1話 『約束』
文字数 706文字
イタリアに行っていた妻のエツコから日本にいるジョーに至急現地に来て欲しいと連絡が来た。電話口で興奮気味にあの絵を見つけたかもしれないと言う。
「わたくしはヴァンミアだと思うの。あの『約束』が見つかったかもしれないのよ!」
十七世紀、わずか四十点ほどの作品を残した謎の天才画家ヴァンミアの研究家であるエツコは、長年、その絵を探していた。極めて美しい少女、観るものに忘れ難い強い印象を残すと当時の画商の手紙などに記され、ヴァンミアの傑作として存在が分かっているだけで、肝心の絵の行方はようとして知れなかった『約束』。見つかったとしたら大発見になる。
「あなたに見ていただきたいの。あなたなら本物かどうかお分かりになるでしょう?」
「エツコ、君がそう思うなら間違いないと思う。すぐにそちらへ行けるようにしよう。あの絵はどんなことがあっても私が入手する」
ジョーは当代切ってのヴァンミアのコレクターだ。彼の絵に魅せられて、気が付けばヴァンミアといえばジョー・ヴァルカンに当たれといわれるような有名なコレクターになっていた。ジョーは車椅子の生活を強いられていたが、ヴァンミアの絵のためなら世界中どこへでも出掛けていく。
実際、イタリアに飛び、こんな田舎のもう誰も住んでいない古い民家までやってきた。当然、ミラノやローマなどの大都市とは違って車椅子対応不可で、ジョーは妻のエツコに身体を支えてもらいながら、家の中に入った。その絵はひっそりと部屋の一角に置かれていた。
それを目にしたとき、彼は思わずエツコの両手を強く握り締めた。それで伝わった。
「これがあの……彼女なのね。とうとう見つけたのね」
「ああ、間違いない。彼女だ」
「わたくしはヴァンミアだと思うの。あの『約束』が見つかったかもしれないのよ!」
十七世紀、わずか四十点ほどの作品を残した謎の天才画家ヴァンミアの研究家であるエツコは、長年、その絵を探していた。極めて美しい少女、観るものに忘れ難い強い印象を残すと当時の画商の手紙などに記され、ヴァンミアの傑作として存在が分かっているだけで、肝心の絵の行方はようとして知れなかった『約束』。見つかったとしたら大発見になる。
「あなたに見ていただきたいの。あなたなら本物かどうかお分かりになるでしょう?」
「エツコ、君がそう思うなら間違いないと思う。すぐにそちらへ行けるようにしよう。あの絵はどんなことがあっても私が入手する」
ジョーは当代切ってのヴァンミアのコレクターだ。彼の絵に魅せられて、気が付けばヴァンミアといえばジョー・ヴァルカンに当たれといわれるような有名なコレクターになっていた。ジョーは車椅子の生活を強いられていたが、ヴァンミアの絵のためなら世界中どこへでも出掛けていく。
実際、イタリアに飛び、こんな田舎のもう誰も住んでいない古い民家までやってきた。当然、ミラノやローマなどの大都市とは違って車椅子対応不可で、ジョーは妻のエツコに身体を支えてもらいながら、家の中に入った。その絵はひっそりと部屋の一角に置かれていた。
それを目にしたとき、彼は思わずエツコの両手を強く握り締めた。それで伝わった。
「これがあの……彼女なのね。とうとう見つけたのね」
「ああ、間違いない。彼女だ」