第26話 実は恵まれている?

文字数 867文字

 夫とは相変わらず会話の少ない日々です。

 最近、友人たちのご主人が次々と退職を迎えられ、悩みを聞くことが増えた。

「夫がスーパーについてくるのよね。それで、今晩は何作るの?って訊くんだけど毎回決めて買物してるわけじゃないし、決めて行っても特売があれば変更することもあるじゃない?気楽に買物も出来なくなったわ」

と付きまとわれるのが鬱陶しいらしい。私から言わせれば『あら、仲良しで結構じゃない。ウチなんて挨拶1つ喋らないのよ』と思う。でも、言わない。

「ariayuさんはいいよね。1人旅させてもらえて」

違う違う。いや違わないかもだが、『夫とソリが合わなくてそれぞれが勝手に行動しているから、こうなっているだけなのよ』と言いたいところだが、本当のことを言えば話のベクトルが変わる。格好の餌食、そして人の不幸は蜜の味。だから

「まあね。旅行代も1人分で済むから経済的なだけよ」と答えている。

「ariayuさん、ご主人が家に居るってどお?
ご主人とどうやって過ごしてる?」

『……』


 以前の投稿に書いたかもしれないが、ウチの夫は60歳でスパッと会社を辞めた。別に経済的な余裕があったわけではなく、会社が嫌になった(たぶん)のと実家の家業を手伝うことになったので。毎日ではなく月に何日かの仕事だから家で過ごす日々の方が多い。そんな生活を始めてもう6年目になる。だから友人たちは、一足先に老後生活を迎えた私によく訊いてくるのだ。もちろん誠意をもってお答えしたいが、何一つ参考にならないと思う。だって事実を洗いざらい言った所で、夫の性格も、今まで送ってきた夫婦関係や生活環境は全く違うんだから。
ただ……
買物にしても旅行にしても夫からダメだと言われたことがほとんどない。私に関心が無くても経済的に支えてくれていることは理屈抜きで有難いと思う。友人夫婦を見るにつけ多少の違和感はあるものの、ウチはウチ。夫と会話が少なくても、友人たちが私を見る目は、恵まれている妻らしい。

 隣の芝生は青く見えるだけではないのかも……と思いつつ、今日も1人旅のプランを立てています。

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