・ブレイド(主演/ウェズリー・スナイプス)

文字数 1,634文字

 一昔前の吸血鬼映画の(ゆう)である。
 けっこう前に「BLADE4」が制作されるのされないの、という話題を見た気がするが、自室にあるのは三作目まで。今回は一番最初の「元祖」について語りたい。
 しかし、「争うばかりの話は嫌い」と公言しているわりに、「でもブレイドは好き!」と主張する自分にけっこうな矛盾を感じる。いやいや、これにはちゃんと理由があるのです。何でかというと……。
 あのね、カッコいいのです。ブレイド。
 そんだけかぃいい!! と鬼のようなツッコミを受けそうな気がするが、大きな理由の一つはコレ。まず「カッコいい」を全て取り去れば、他には何にも残らんのでは? と一見思ってしまうくらいのカッコ良さ重視!
 とにかく戦う、たたかう、たたかう! 二作目以降は妙に「仲間」的な位置づけのキャラが増えるが、元祖はほとんどウェズリー・スナイプスの一枚看板! もちろん敵役の色男、スティーブン・ドーフのトンがった悪役っぷりも素晴らしいが、主役はやはりブレイド! おそらくは長~いマントをひらめかせてカッコ良く()せるために、戦いながらむやみやたらと回転し、鮮やかに敵の吸血鬼どもをなぎ倒す!!
 あとツッコミ待ちか? と思うくらいのところどころの雑な設定。
 宿敵のフロスト(演じるはスティーブン・ドーフ)は吸血鬼ゆえ、日光に当たると死んでしまう。よって人間と吸血鬼のハーフであるブレイドの「日に当たっても平気」などの特性をうらやみ、自分もその特性を得たいと望んでいる。ブレイドの血を(いしずえ)にして、「吸血鬼の神」になろうと企んでいる。
 それゆえフロストは何かにつけブレイドをつけ狙うのだが、その「日光対策」のアバウトさ! 朝日を浴びてもヘルメットをかぶってりゃ平気! 白昼堂々と街中に現れ、フロストを見た時のブレイドのセリフたるや!
『日焼け止めか』
 日焼け止めでどうにかなっちゃうもんなのかぁい!! そんな「美容に気をつかう乙女」みたいな対策でどうにかなるんなら、わざわざブレイド狙わなくてもエエやないかぁあい!!
 と、まあ「キング・オブ・B級映画」と言いたくなるような作品なのだが、それでも妙に自分が()かれてしまうのは、「カッコ良い」ばかりが理由ではない。
 主人公のブレイドは、フロストに母を殺されているのだ。妊婦であった母はフロストに血を吸われ、病院にかつぎ込まれる。母の腹からブレイドはとり上げられ、そこでこの世に生を受ける。しかしフロストの吸血行為が(もと)で母は死に、ブレイドは「人間と吸血鬼のハーフ」という異端の者になってしまう。
 母の仇と、そうして「人間でも、吸血鬼でもない自分」を生み出したフロストへの復讐のため、彼は吸血鬼を殺し続ける。
 しかし実は母は生きていた。それもフロストの愛人の一人となって――。
 話は変わるが、以前父に誘われて、ある講習会に顔を出したことがある。講師は二人。アイヌの方と、韓国と日本とのハーフの方だった。
 アイヌのおじいさんも、「アイヌとして生まれて、さまざまに辛い思いをした」らしい。しかし、その目には「アイヌとして生まれ育った」という確かな誇りが輝いていた。
 しかし、ハーフの方は壇上(だんじょう)で穏やかながらこう言った。
「日本にいれば『韓国人、韓国に帰れ』と言われ、韓国にいれば『日本人、日本に帰れ』と言われました」
 その言葉を耳にして、目の裏が一気に熱くなった。ここで泣いては、と我慢に我慢を重ねていたが、耐えきれず涙してしまった。
 どちらの国にも存在を認めてもらえない、足もとのおぼつかない心細さ、自分の存在の不確かさ。中学生の時にいじめられていた自分の気持ちもないまぜになり、どうにも涙が止まらなかった。
 さて、そこで本棚の「ブレイド」シリーズである。
「人間」と「吸血鬼」のハーフである、というブレイドの出自。それはあまりにもダークファンタジーの王道らしい設定ながら、裏では現実の問題を強く暗示しているような……。
 そんな気がして、ならないのだ。(了)
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