・ハーベイシャス(カードゲーム)

文字数 1,061文字

 さて、少しここで目先を変えてひと休み。
 まんが、本、CD、DVD……。私の本棚には色々なものが詰まっている。あと実は、「アナログゲーム」なんかもある。
 アナログゲーム。要は電源を必要としない、カードゲームやパズルゲームなんかである。これはまともに絵も文章も書けなくなる「うつが重め」の状態の時のひまつぶしにちょうど良い。だが何せ思考がまともに働かないので、ろくにクリア出来ないという難点もある(あと、そもそも手を出す気力もない時もある)
 この頃はありがたいことに、こうして文章が書けている。そんなシアワセな状態でなおハマっているゲームがある。
 この間購入したばかりのカードゲーム、「ハーベイシャス」!
 これは個人的にどストライクのゲームである。何せこの手のゲームにもままある「殺伐(さつばつ)とした要素」が一つもない。
 商品の副題に「魅惑のベランダガーデニング」とある通り、プレイヤーは「ハーブを育てる園芸家」になった気分で、自分のプランター(カード)にさまざまなハーブを選んで植えていく。
 しかしプランターには色々な条件が存在するので、あくまでそこに従わなくてはいけない。ひとしきり「ハーブを植えた」後、手に入れたカードの数などで点数を競うゲームである。とてもシンプルでワンプレイの時間も短く、かなり爽快感がある。
 もちろん二人以上でプレイする場合、そこには「より良いカードを他の人より多く得たい」という駆け引きが生じる。だが、その駆け引きで扱われるのはあくまで美しいハーブのカード。そしてボーナスカードの「ハーブ入りスコーン」のみなのだ。
 何と平和なゲームだろうか! 手もとにないから詳しいことは分からないが、「武器」や「モンスター」のカード、戦争やだまし合いに満ちあふれたそれと違って、あまりにも牧歌(ぼっか)的で美しい!
 そうして、このゲームにはまた「お得」な側面がある。何と一人でもプレイ出来るのだ! コロナ禍でなかなか人が集まれない中で、おこもりにぴったりな作品なのだ!
――分かっている。
 本当はいやと言うほど分かっている。
 現実はそう美しくも甘くもない。ハーブを育てるより今日のご飯にありつくことも覚束(おぼつか)ない人がいる。奪い合い、殺し合い、ウイルス、戦争。現実(リアル)はハーブを育てるゲームよりもっとずっと過酷だと、テレビやネットの画面はひっきりなしに訴える。
 しかし、画面の内にも外にも、心が沈むこむ物事はあまりにも多すぎるものだから……。
 私は今日も、すきまの時間に箱を取り出し、「架空のプランター」にハーブのカードを植えるのだ。(了)
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