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文字数 1,249文字

 
何も考えてない彼女の表情を見て、
こんな子供に自分の運命を(まか)せた
(おろ)かしさを(さと)った。


終わった・・・

何もかも終わった・・・


人は本当に(あきら)めると虚無(きょむ)になるらしい。


そんな僕を不思議そうに見つめつつく幼女。


鼻を()まんだり耳を寝かしたり
髪型を変えたりと好き放題してたが、その内
まったく反応しない僕に興味(きょうみ)を無くしたのか、
彼女は一人で何か機械をいじくり出した。


『バラストタンク排水(ブロー)《はいすい》!』


少女がそう言って何かのレバーを引くと、
船体の左右から勢いよく水が吹き出し始めた。


それに(ともな)い船体が(かたむ)き、浮遊する(よう)に、
ぷかぷかと船体は海水の上で浮かび始めた。


「あれ?浮いてる!?
 動かないんじゃなかったの?」


『電気系統は動かないよ。
 手動で弁を開けて海水を排出(はいしゅつ)しただけだよ。
 風呂の(せん)を抜くのに、
 機械の力を使わなくても
 人間の力だけで抜けるのと同じ 』


「浮いてるの?」


『うん。 バラストタンクの中の水出したから』


「バラストタンクって何?」


『浮き輪見たいなもの。
 浮き輪の中に入ってた水を出したから
 軽くなって浮いた。
 (べん)を開けるだけで水の重みで、
 勝手に排水(はいすい)していく 』


そう言っている間にも、
二人を乗せったカプセルは、
沖合いに向かい流されていた。


津波が近いのか!?


津波の良く知られている前兆として、
引き(しお)がある。

それは自然の引き潮と違って、
目に見えて急激に始まる。

引き潮が始まっているのだとしたら、
津波が近いのだ。


「これ動いてない?」

『動いてるよ』


「流されてるって事?」

『違うよ、目的地に向かって進んでる』


「これ動かないんじゃなかったの?」

『うん。動かない』


禅問答(ぜんもんどう)か!?


子供って何を言ってるかわからない・・・


『船体自体は動かない。
 だからピーピーとキーキーに
 引っ張って貰ってる。
 浮いてるからそんなに重くない。
 軽くて丈夫なカーボーンケーブルで(つな)いで
 ()()って(もら)ってる 』

海の中の馬車のようなものかと認識(にんしき)する。


引いてるのは馬じゃなく海豚(イルカ)だけど。


海馬(かいば)と言えば、
トドやセイウチなどのアシカ化になる。


そっちのほうが海豚(うみぶた)って感じだ。


海馬って感じじゃない。


この(さい)、イルカを海馬って呼んだほうが
いいと思うのだが。


『揺れるから、シートベルトして』


そう言った彼女は、
(すで)にシートベルトをしていた。
 

窓の外では船体がもの凄いスピードで進んでいた。

 
 
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