文字数 1,102文字

時間がとまったような砂浜(すなはま)で彼女は僕を見つめ、
僕は彼女を見つめ続けた。

彼女はそんな僕を真摯(しんし)に見つめたまま(つぶや)いた。

『バカなの?』

えっ?

想定外(そうていがい)解答(かいとう)戸惑(とまど)う。

彼女ははんばパニックを起こした僕を
見つめたまま冷たく言った。

『そんな事あるはずがないじゃない。
 バカなの? 』

えっ?えっ?え~!?

(おぼ)れた金魚の(よう)に口をパクパクさせる僕を、
彼女は(あわ)れむ(よう)な瞳で見つめ静かに続けた。

『本当は』

僕は(すく)いを(もと)める(よう)に、
彼女の次の言葉をまった。

『本当は、このポッドはタイムマシーンなの』

そう言ってから再び僕の反応(はんのう)を見るように、
彼女は()ってしまった。

それはまるで僕の理解が追い付くのを待つように
じっと。

映画なんかでは絶滅(ぜつめつ)しかけた未来から、
過去を変えるために未来人がくると言った設定(せってい)
よくある。

彼女もそうだと言いたいのだろうか?

彼女はそんな僕の答えが見つかる前に(つぶや)いた。

『私は過去(かこ)から来たの』

「えっそこ未来じゃなく過去なの!?」

『そう過去・・・  』

・・・

『私は過去から来た、あなたのママよ 』

えっ!?えっ!?えっ!?

どういう設定!?

『信じないの?』

「信じる信じないの前に僕の母親は、
 すでに死んでる!?」

そう言ってから彼女の容姿(ようし)を見てふと気づく。

過去なら母は死ぬ前で、
母に会う事は可能(かのう)なのだと。

『そう未来は変えられないけど、
 過去から未来に干渉(かんしょう)する事は可能なのよ。
 後はあなたが信じるか信じないかだけ 』

あまりに母とはかけ離れたこの少女を見て思う。

僕が彼女の言葉を信じれば、
僕は母にもう一度会えるのだと。

「母さんなの・・・ 」

僕が彼女の(ほほ)に手を伸ばしかけるのを
制止するように彼女は()げた。

『マザコンなの?』

僕は手を伸ばしかけたまま、
彼女のそのセリフに硬直(こうちょく)する。

えっ!?

彼女はそんな僕をじっと見つめたまま続けた。

『バカで、マザコンなの?』

ノォぉぉぉぉぉ──────!?

(うそ)よ。 そんな事あるわけないじゃない 』

そう言って僕を見つめる無垢(むく)(ひとみ)

誰かが言った。

子供は無邪気(むじゃき)な悪魔だと。

今、僕はその意味を実感(じっかん)体感(たいかん)する。


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