第3話

文字数 912文字

結局その後太一と顔を合わせることなく、入学式からの流れで行われた保護者会の終わったお母さんと家に帰った。
「入学式どうだった?」
お父さんの帰宅を待ってから夕飯と思っていたが、急な残業が入ったと食卓は3人で囲むことになった。
いただきますもそこそこに仕事から帰ってきたばかりのお姉ちゃんはワクワク顔だ。
「どうもこうも無いよ。疲れちゃった。」
今日の夕飯は私の好きなハンバーグ。それもチーズがたっぷりかけられて、目玉焼きまでつけてもらった。家族のお祝い事の時はいつも主役のリクエストをお母さんは作ってくれる。
「でも礼奈が1番可愛かったかなー。」
ニコニコの得意顔のお母さんが噛み締めるように言う。そんなわけない。
「いや」
「そりゃそーよ!礼奈が1番可愛いに決まってる!」
反論する余地も与えられずお姉ちゃんはお母さんに同意した。
「そん」
「でも佳奈も1番可愛いからなー。」
親バカ選手権があったら間違いなくうちの両親は上位に食い込む…。
私に口を挟むことを許さない2人を諦めてハンバーグを頬張った。やっぱりお母さんのハンバーグは美味しい。
そんな私を他所に2人は私の学校生活で盛り上がる。礼奈はモテちゃうだの、礼奈の部活はどうだのとひたすらに私を置いてけぼりにして…。

お父さんが帰って来たのは丁度私がお風呂を出た時だった。
濡れた髪のまま脱衣所からリビングに向かう途中、玄関前を通りかかったタイミングで外から鍵を回す音がした。
「おかえりー。」
開けられたドアからお父さんの顔が覗くのを待って声を掛ける。
「おぉ、ただいま。」
そこに人が居るとは思わなかったのだろう、お父さんは一瞬驚いた顔をして直ぐに笑顔になった。
「入学式、どうだった?」
靴を脱ぎながら夕飯時のお姉ちゃんと同じ質問をお父さんはしてきた。
「疲れちゃったかな。それより今日の夜ご飯はハンバーグだよー。」
リビングのドアを開け、壁掛け時計を見ると10時を少し過ぎている。
お父さんが帰ってきたらことに音で気付いたお母さんはリビングの続きになっているキッチンにもう立っていた。その隣には先にお風呂を済ませていたお姉ちゃんも並ぶ。
「お疲れ様。」
キッチンからお母さんが声を掛けた。
「ああ、詩織もお疲れ様。」
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