第7話

文字数 742文字

「あ、三浦じゃん。」
「あー。」
明里が同じ中学出身の子から良く思われていないことに気付いたのは、私たちが仲良くなってすぐだった。
3組の前を通る時、明らかに明里の様子はおかしかったし、特定の子から逃げる様に、隠れる様に過ごしていた。そんな明里が男子バレー部のマネージャーになったばかりの頃の私と重なった。
聞くか迷って太一に相談もした。
「礼奈は知ってるじゃん。今力になってあげられるのは礼奈じゃない?」
太一の言う通りだ。陰口を言われるのも避けられるのも、その辛さを私は知ってる。

「三浦さん、あのさ…3組の…」
お昼休み、教室の隅。私は意を決して明里に問う。
ぎくり、とした明里は数秒の沈黙の後、ぽつりぽつりと話してくれた。
明里が避けている2人は同じ中学の子。
幼稚園の時から仲良くしていた子から中3になって間もない頃、急に無視をされ明里を標的にしたいじめが始まった。
高校は少し離れたところを受験したけど当時の元クラスメイトが1人、同じ高校に進学し、その子と元々仲の良かったもう1人を合わせて2人が3組にいることを。
「三浦さん…その……なにかきっかけとかって…」
今にも泣き出しそうな明里にかける言葉が見つからなかった。
「それがわからなくて…本当に急に始まったことだから…」
そうだ…。いじめなんてそんなものなんだ…。
些細なこと。そこにある真実なんて全く意に介さず、相手が気に入らないと思ったらそれが全てになる。
理由なんてなんだっていいんだから。
明里の小さな身体が、今目を逸らしたら崩れてしまう気がした。
「私は…三浦さんのこと好きだよ。」
少し掠れた声が出た。
「松本さん…」
涙を溜めた明里の目が真っ直ぐに私を見詰める。
「ありがとう。本当に、ありがとう。」
この時から私達はもう離れられなくなったんだと思う。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み