第22話

文字数 821文字

「あんた、会長? 社長? 常務? 監査? ああ、もうだいたい役員が多すぎるでしょ! 無駄でしょ! 無駄無駄無駄無駄ッ! ふんぞりかえってる場合じゃないでしょ! おたくのラジオ聴いてたら不謹慎の連続! わけのわかんないショッピングやるし、こんなときに雨音奏でるゲスト呼ぶし! あ、切ろうとしたでしょ。切ったってまたかけるから。ていうか、訴えるから。だいたい聴いてないわけ? おたくんとこのラジオでしょ。ありえないでしょ。責任感ないわけ? おたくんとこの社員が電波乗っとって、おたくの最悪な労働環境訴えてるけど聴いてないわけ? しかもパーソナリティ、それもみ消そうとしたけど聴いてないわけ? ついでにこっちのメッセージ、平気で無視するんだけど聴いてないわけ? ありえないでしょ! 最低最悪の放送局でしょ! や、現場の人間注意して終わろうとしてるでしょ。こっちが求めてるの、そういうんじゃないから。不愉快な内情聞かされたのは、あんたら上層部のせいでしょ。見て見ぬふりした上層部のせいでしょ。だから役員が責任取るべきでしょ。上なんて責任取るのが仕事でしょ。本当に不愉快だから! 偉そうな肩書きつけてんなら、それっぽいことしてみせろ!」
 台風のまぶたは通話を切った。息つく間もなく、一○四にかけて次の電話番号を教えてもらう。役員の人数は本当に無駄に多すぎる。組織図を作ったら逆ピラミッドかもしれない。
 そいつらに喝を入れたあとで最後にかける場所は、そらで言える。台風のまぶたもかつて世話になった、労働基準監督署だ。

                    ○

 八木は引きだしにしまっていたお菓子、カップ麺をすべて鞄に詰めこんだ。空井さんの机に一言【お先に失礼します】とだけメモを置く。
 さらば視聴者センター、と去ろうとして、八木は一度だけ戻り、メモにあめ玉を一つ添えた。
「ケチですよね、八木さん」
 そんな空井さんの声が聞こえた気がした。
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