第41話 開発途中のお高い武器の使い方

文字数 1,663文字

 ふふふふふふっ。

「なんだよ、不気味な笑いだな。」
 ゴムドリが国防長官の猫のダルマに言った。

「いやいやいや。いやはて。さあ、こんな見もの、今まで見たことない。」
 ダルマはニタっとしながら、猫の姿のまま言った。

「その倉庫一体に人はいないな?」
 ゴムドリがミカエルに聞いた。

 今日の鳥型ドローンと蜂型ドローンの捜査者はミカエルとメロンだ。メロンはもともとNASAで鳥型ドローをゴムドリと一緒に開発していたし、ミカエルはハーバードで応用工学を研究していたので、教えられればすぐに操作をマスターした。

「ああ、人っこ一人いない。猫2匹がいるだけ。」
 ミカエルが言った。

「こっちもOK。人っこ一人いない。猫2匹が見えるだけだわ。」
 メロンも言った。薄い顔が研究者の顔になり、凛々しく見える。

「さあ、大金叩いて買った私の衛星は、どんな威力を発揮してくれるんですかね。」
 ミカナが期待してささやいた。

「まあ、発展途上の技術だから、その爆発力を利用してもらうぜ。」
 ゴムドリはそう言って、猫2匹に合図を送った。

「ソフィー、ダルマ、避難だ。その倉庫を離れろ。離れたら、合図を送れ。俺たちも目視で見ている。」
 ゴムドリは言って、ミカナが買ったばかりの開発中の衛星を操作するモニターをのぞきこんだ。
「逃げてえー。」
 ブー子とミケが小さな声でささやいた。その後、動物の言葉で何か言った。

 二匹の猫が一目散に武器倉庫から離れていくのが見えた。
 メロンとミカエルが見張っている各ドローンのレーダー上は一目散に走っていく猫2匹以外は温度を感知していない。

「ごめんね。休暇が明けたら使える武器なんて、一つもないわ。戦車もミサイルもぜーんぶやってしまうわ。」
 ミカナはそう言った。ロシア皇帝の隠し財産を相続するだけのことはあって、どうやらミカナの本性はかなり怖い性格のようだ。

「OK!」
「レディーGO!」
 2匹の猫から返事があった。

 ゴムドリは華麗な手つきで開発中の衛星を操作した。
「ちょっと細工したんだよねえ。地球上では見たこともない集中砲が発射されるよ。」
 ゴムドリはそうつぶやきながら、Enterキーを最後にパシッと押した。

 衛星にはドローンの解析データが連携されており、射程のターゲットとして、正確に武器にマーカーが置かれていた。

「空がゴロゴロ言っている!」
 ソフィが状況中継した。

「ドローン、もっと離れろ!」
 ゴムドリが叫び、猫も空中の鳥型ドローンと蜂型ドローンが武器倉庫からすごいスピードで離れた。

 しばらくして、空から雨が降ってきた。その雨は噴水の逆バージョンのように、空からターゲットに向かって水柱が放り投げられるようなタイプの雨だった。未だかつて地球上でこんな水柱が多発する雨が降ったことはない。しかも正確に戦車やミサイルをぶち抜いていた。

「カモフラージュに雷ね。」
 ゴムドリは雷をところどころ織り交ぜながら、水柱を武器倉庫の真上にいくつも出現させ、武器ののみを大量水でぶち抜いた。

「どどーん、どどーんと2回だけした。」
 ソフィとダルマがそれだけつぶやいた
 武器倉庫の屋根は破綻したが、武器倉庫以外は水柱の被害はなかったようだ。雷と大量水で神の怒りを買ったような光景に、人々は度肝を抜かれたに違いない。

「撤収!」
 メロンが冷静な声で叫んだ。

「猫のままその軍部を抜けなさい。」
 メロンは指揮官のように指示を出した。

「そこを抜けたら、人の姿で適当に乗り物を使って移動し、国境を猫の姿で渡る。そこでドローンは待機しているわ。少なくとも、隣国は空飛ぶ猫に攻撃してこないわ。」
 メロンは言った。

「きゅうり、ナイス。ソフィ、ダルマ、無事を祈る。」
 さと子さんが言った。

「OK。明日の朝は世界中の武器商人に武器調達依頼の電話が殺到するわね。」
 ソフィこと猫のモーリーは肩をすくめて言った。

「でも、買えないんでしょ。ミカナが買い占めちゃったから。」
 トオルが言った。

「まあ、すごい騒ぎだぜえ?きっと。」
 ゴムドリは、椅子をくるっと回しながら、天を仰いで言った。
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